さらば あぶない刑事
正直、リアルタイム世代ではなく再放送とかフォーエバーとかを楽しんでいた世代。それでもやはり思い入れの強い作品の一つだ。今や『刑事ドラマ』となるとたいていがミステリー色が濃い。ハードボイルドで、銃でマフィアや暴力団とドンパチするような作品はすっかり視なくなったものだ。原因は良く分からない。まぁ、銃でドンパチってのが、そもそもにして「リアルじゃない」のかもしれないから敬遠されているのかもしれない。
そうした中だからこそ思い入れが強い作品。なので少し遅れたが劇場に足を運んだわけだ。
ストーリーとしては、
定年間近のタカとユージが自分たちの最後の相手として宿敵・銀星会の後釜となった闘竜会を選んで相変わらずの無茶ばかり。課長となった透は「定年直前半年間が最も殉職率が高い」と二人に定年退職まで残り四日を大人しく過ごしていてくれと説得するが聞く耳は持ってもらえない。とはいえ、タカには退職後にニュージーランドで一緒に暮らすことを約束した婚約者・夏海がおり、ユージはドンパチの前にかつて自分がパクッて更生させた川澄を気にかけていた。
そんな折、闘竜会を追っていた二人の前にアメリカで暴虐の限りを尽くしているギャング・BOBが次の侵略先として横浜を選んだことを察知する。そのBOB幹部・ガルシアとかつて接点があったらしい夏海、BOBにかつての自分の仲間を良いように利用された川澄。それぞれの存在と深く関わるタカとユージは…
という感じ。
さて、映画はまず始まると相変わらず無茶をするタカとユージの姿が描かれてから、とても懐かしいカット割りやカメラワークからスタートする。今の人が見ると「懐かしい」というよりも「古臭い」と感じるのではないかとすら思うほどだ。タイトルも古臭く、そのバックの横浜の夜景もなんか当時を思い出すようなノスタルジックな匂いすらある。
そういったシーンはその後も随所に入る。しかし、古いだけではない。ユージが今時のスポーツカーを振り回すスタイリッシュさがあり、タカは変わらず雰囲気の良いバーでヒロインと一緒にグラスを傾ける大人の色気がある。銃撃戦に限らず各所に入るアクションシーンもしっかりしている。「定年間近の二人」ということでどちらも六十歳間近のはずなのにとにかく良く動く。そういう意味では、「還暦間近の体力はないが蓄積してきた技術と経験がある刑事」という感じではないのは、この二人らしいといえばらしい。
タカの大人のハードボイルドさがあるが、ユージには時折ちゃんとコミカルなシーンが入るのも印象的でこの二人らしい。こうしたハードボイルドと、アクションと、そしてちょっとしたコミカルさが入り混じった感じは『あぶ刑事』だな、と。
一方で不満がないわけでもない。特にヒロイン・夏海の扱いは微妙。二時間弱という時間では描き切れなかったせいでもあるのだが、もう少しガルシアと絡ませるとかそうしないとこちらとしては感情移入がし辛いというか、タカの哀しみに肩入れが出来ない。タカもタカであの場で「撃て」とはどういうことだったのか、と。そんな大切な人なら「撃て」ではなく「俺のことは良いから逃げろ」ではなかったのか。そういった部分がまずチグハグしていて、スタイリッシュではなかった。
また今回のライバル役・ガルシアらとの戦いも不完全燃焼な感じだし、さらにいえばそこから敵に大量に囲まれた状況をどう打破したのかが見えない(実際に描かれていない)。CMでも耳にした方は多いと思うが、ユージの「残りの弾の数と敵の数が全く合いません!」というのは実はこのシーンなのだが、それをこの二人がどう乗り切ったかを結局描かずに終わってしまった。これはさすがにダメだろう。まぁ、突撃してきた大型タンカーを二人が素手で受け止めようとした終わり方よりはいいのかもしれないがw
まぁ実はちゃんと、二人はちゃんと生きていて無事定年退職。夏海の代わりなのかユージがタカと一緒にニュージーランドに渡って、二人で「タカ&ユージ」で探偵会社を起こしつつもゴルフをしたりなんだったりで悠々自適な生活を送る、というエピローグもあるんだけどね。でも、夏海の位置がユージにすり替わってていいのか。タカが夏海なんていなかったみたいに振る舞っているのはどうなのか、とも思ってしまうのだけどね。
総評は、★★★★(4点/ 5点)。かつての『あぶ刑事』を知っていれば、多少の不満は出るかもしれないが懐かしさで楽しめると思う。
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