容疑者Xの献身

著:東野 圭吾 発行元(出版): 文藝春秋
≪あらすじ≫
天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。
(BOOK データベースより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
東野圭吾さんが多数発刊している作品の中でも名作・傑作という評価の高い作品。
もうすでに実写映画化すらもされている作品でもあるので多くは語る必要もないだろう。実際、大勢の人がこの作品を「東野圭吾さんの作品の中でもさらに秀逸」と評していることは決して間違いではなかった。それだけ素晴らしい作品だ。実際、私は映画版の方は観ていたので展開もトリックもオチも知っていた状態だが、それでもやはり引き込まれた。
計算され尽したトリック、ある種の純愛にも等しい献身、そういったものを見抜きながらも真相に辿り着いてしまう旧友・湯川の存在。そういったものが上手く絡んでいる。
欲を言うならば、石神にもう少し二つのことを意識させてほしかったかな、とは思った。一つは、トリックの肝である「もう一つの他殺体」が何の罪もないホームレスだったことへの葛藤。湯川は「論理的に目的を達成するためなら手段は問わない」と明言しているので、彼にとっては名前も知らないホームレスを殺害してでも守るべき人を守りたいってことなのだろうが。
もう一つは、靖子の娘・美里への配慮。そこが欠けていたために結果的に彼女は自殺未遂に至っている。母親の靖子が自首してしまった以上、真実を知る日もそう遠くはないだろう。真相を見抜かれることを想定はしていなかっただろうが、靖子と美里の存在が自殺寸前だった自分を救ったというなら彼女だけでなく美里への配慮にもその頭脳を働かせるべきだったように思う。
まぁ、そうは言っても重箱の隅を楊枝でほじくるような要望でしかないのだけどね。
評価は、★★★★★(5点 / 5点)。要望は上記のようにあるにはあるのだが、不満というほどのものでもない。東野圭吾さんの作品の中でも傑作の一冊と呼んでいいと思う。
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