櫻子さんの足下には死体が埋まっている 狼の時間
- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[櫻子さんの足下には死体が埋まっている]

著:太田 紫織 発行元(出版): KADOKAWA
≪あらすじ≫
北海道・旭川。高校二年の僕・正太郎の夏は、衝撃で始まった。差出人不明の封筒に入っていたのは、愛犬・ウルフの無残な写真。シリアルキラー、花房の仕業と確信したのに、聡明な櫻子さんは違うと断言。しかも当の花房から『ある娘を死から救って欲しい』と依頼が届き…。(「狼の時間」)ほか、内海巡査が遭遇した事故物件の怪(「午前四時のノック」)も収録。櫻子さんと正太郎の最強バディから目が離せない、大人気ミステリ!
(BOOK データベースより抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
このシリーズも気が付けば九巻目である。今回もお付き合いください。
狼の時間
本編大部分を占めることになり、サブタイトルにもなっているエピソード。実質的にほぼこの一エピソードによる長編回と言っても差し支えないだろう。
今まで多くを語られてこなかったシリアルキラー・花房。嘘か本当かというその真偽はともかくとして、花房に妙な正義感というかそういうのを持たせたのは作品としては上手いなと思った。ただ蝶骨が欲しいだけのシリアルキラーではない、というのはこの作品として大きな転換点というか、大きなキーポイントにはなりそうだなと思った。
一方で愛犬(?)のウルフを殺したことは賛否ありそうだ。私は正直、そこまで深く関わっていなかったわけだし、ヘクターが殺されるよりは良かったかな、くらいの印象。ただ、ウルフを殺された部分から自殺に転換し、さらに過去の磯崎先生の事件へと繋がったため、終盤ではすっかりウルフのことが抜け落ちているのは、もう少し正太郎を成長させるためか大人にさせるためかあるいはその両方に置いて活用出来なかったのか、とメタな疑問点は残っている。
あとなんやかんやで正太郎の母親は扱い(メタな意味で)を間違えたな、と再認識した。正太郎が櫻子のところに今なお通っている現状を踏まえると、わずか数行の登場ながらこういう扱いにしなければ良かったのに、と思わずにはいられない。
趣向を変えた一冊、という意味では評価して良いと思うが、すっかりミステリとしての要素は消えたのだな、と残念にも思った。
午前四時のノック
おまけ程度のエピソード。ただこっちの方がミステリーとして推理が出来るというのはいかがなものか(苦笑
本当に70pあるかないか程度の短編ではあるが、そうした中では綺麗に纏まっている。ただ最後のまとめ方は、別にこの作品はホラー作品ではないのだからああいう思わせぶりな終わらせ方をしなくて良かったとも思うけど。
評価は、★★★(3点 / 5点)。
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