絶叫城殺人事件

著:有栖川 有栖 発行元(出版): 新潮社
≪あらすじ≫
「NIGHT PROWLER(夜、うろつく者)」と記された小さな紙片を、口の中に押し込まれ、次々と殺害される若い女。残酷な無差別殺人事件の陰には、カルトなホラー・ゲームに登場するヴァーチャルな怪物が―。暗鬱の「絶叫城」に展開する表題作ほか、「黒鳥亭」「壷中庵」「月宮殿」「雪華楼」「紅雨荘」と、底知れぬ恐怖を孕んで闇に聳える六つの迷宮の謎に、火村とアリスのコンビが挑む。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
来春(来年一月)から実写版連続ドラマ化が決定した火村英生シリーズ。シリーズ最初から読む、というのはさすがにシリーズ作品が多いようなので、書店で見つけたものを手に取ってみた。まぁ、これも一期一会だろう、と。
偶然だったが、まさかの短編集。その分だけじっくりとやる長編に比べれば主要キャラクターの掘り下げは浅いものの、事件が次々と起こる上に長々と事件を引っ張るわけでもないので読みやすかった。
以下、個別感想。
黒鳥亭殺人事件
殺人でありながら、その真相はあまりにも無様で、そしてそれでいて幼い少女に負わせるには残酷な結末。まぁ、それを少女が理解していたかはともかく…。
なるほどと思う反面、やはり純真無垢な少女がどんな形であれ携わってしまうのは後味の悪さを覚えずにはいられない。
壺中庵殺人事件
ツボのような密室で殺された。さて、そのトリックはいかように、というエピソード。トリック自体は決して斬新なものではないものの、状況の特異さを上手く利用しているエピソードだと思った。
月宮殿殺人事件
知識が有無をいわせた話。ただ、それが嫌味ではなくて「あぁ、そういう世界もあるんだな」と思えたし、燃え盛る家に戻った被害者の心理を絶妙についている。
それにしてもサボテンの名前ってあんな中二病みたいな名前なんだ(苦笑
雪華楼殺人事件
あまりに偶発的すぎる事件。まぁ、突き詰めれば難しい話になりそうだけどね。死ぬことがほぼ確定しているような高さから投身自殺をしたその人に何かがぶつかったら、それをぶつけた人は傷害罪ないし殺人罪になるのか、と。
こちらもあまり後味が良い話ではない。
紅雨荘殺人事件
個人的にはこの中では一番好きなエピソード。発想やトリックが面白いし、火村の助手役である有栖川の発言が上手くキーポイントになっているところ含めて王道的なミステリーの要所を抑えている作品だと思う。
絶叫城殺人事件
この本のタイトルにもなっているエピソード。ゲームを模したような殺人事件の果てにあるのは何か、というもの。こういう場合たいていゲームやらアニメやらのサブカルはひたすら叩かれる。そうした現状を描きながら、ゲームやアニメを批判し「ヴァーチャルと現実の境目が分からなくなっている」と述べるコメンテイターへの痛烈な皮肉の混じる結末となっている点は良かった。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。トリックやストーリーはとても工夫されているし短編集としての仕上がりも上々だが、個人的に後味の良くないエピソードが多めだった分だけマイナス。
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