ノックス・マシン

著:法月 綸太郎 発行元(出版): KADOKAWA
≪あらすじ≫
2058年4月、上海大学で20世紀の探偵小説を研究していたユアン・チンルウは、国家科学技術局から呼び出される。博士論文のテーマ「ノックスの十戒」第5項が、史上初の双方向タイムトラベル成功に重要な役割を担う可能性があるというのだ。その理由を探るべく、実験に参加させられた彼が見たものとは―。表題作「ノックス・マシン」、名探偵の相棒たちが暗躍する「引き立て役倶楽部の陰謀」などを含む中篇集。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
このミステリーがすごいで1位を獲得したことがある、という部分に惹かれて手に取ってみた一冊。
ぶっちゃけた話、かなり読み手を選ぶ。古典ともいうべき過去のミステリー小説(海外作品)や、SFジャンルへの強い興味、量子力学をはじめとした部分への深い造詣がないと本当の意味で楽しめるものではないだろう。これらを全て網羅している読者が果たしてどれだけいるのか。私は、どれもこれも造詣が浅いのでたぶん真の意味では楽しめなかったんだと思う。それでも序盤三篇の中編はそこそこ楽しんだんだけどね。
読み手を選ぶ、というのは別に悪いことばかりじゃない。読者は本(作者)を選べるが、作者は読者を選べないともいえる中で、作者が読者を意図的にふるいにかけて選ぶ要素でもあるし、そういった一冊もあっていい。
私は残念ながらその領域には到達しえなかったものの、この本を読んで「理解したい!」と情熱が沸き上がって海外ミステリーや最新科学への勉強や造形を深める人もいるだろう。
ただ一つ疑問はこれが、「このミス」で1位にしてしまって良かったのか、ということか。確かにアイディアとしては面白いと思うし、ミステリー要素もある作品だが、一方でSF色の強さや前述のように真の意味で理解するには多数の知識が求められる点では「個のミステリーがすごい?」と疑問もある。
評価は、★★☆(2.5点 / 5点)。読み手を選ぶ。手に取る人には相応の覚悟が必要だが、覚悟を決めた選ばれた読み手ならば楽しめるだろう。
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