花想空間の宴: 華術師 宮籠彩人の謎解き

著:篠原 美季 発行元(出版): 新潮社
≪あらすじ≫
「迷宮庭園」に暮らす宮籠彩人は、花の言葉を伝える華術師の貌を持つ。そんな彼の許に足繁く通う編集者の立花真が、突然、消息を絶った。折しも、周辺では華術師を巡る血なまぐさい事件が起こり始めている頃。そして、殺人事件の容疑者に、彩人が…。真相を追う彼らの前に、多重に仕掛けられた「嘘」が浮かび上がるとき、謎に満ちた「華術師」の真実が、ついに明らかになる―。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
華術師シリーズ最新作。
といっても今回、実はあんまり華術師的なというか「花」による事件解決っていう感じはしなかったかな。まぁ、いつも割と流れて行く中でふとした瞬間の閃き一発で事件解決っていうシリーズではあるんだけど、そうした趣向がいつも以上に強かった印象。
あらすじではだいぶ興味をそそられる形のあらすじもあるが、それらも手厳しい言い方をすれば半分は期待外れ。立花真が消息を絶ったことと殺人事件には何のつながりもある意味なかったし、彩人に殺人容疑がかけられそうになるがそれも先輩・千利の機転と権力でわずか数ページで終了、とあまりにあっけない。
華術師に関してもあれこれと語られながらも実際のところは不明な部分も多く、それらしいことが語られながらも真相は闇の中、という感じ。まぁ、そもそもにして読者の何割が華術師の真実に興味があって期待していたのかというと微妙なところなので、そこが話の軸にならなかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
正直なところ、終わり方だけを考えるとこれが最終巻でもおかしくない終わり方。華術師の謎というか真相、起源みたいな部分はまだまだではあるが、少なくとも宮籠家におけるサユリなどの謎やサユリと接することが出来る真の謎は語られてしまったし。でも、最後の殺人事件の真相がただの「遊び」を勝手に周りが本気にしただけ、っていうのは寂し過ぎるが。
評価は、★★★(3点 / 5点)。文章的な読みやすさやキャラクターに関しては今まで通りの出来で申し分はないのだが、他はいろいろと他のシリーズ作と比べて見劣りする部分も多い。
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