十時屋敷のピエロ

著:東野 圭吾 発行元(出版): 講談社
≪あらすじ≫
ぼくはピエロの人形だ。人形だから動けない。しゃべることもできない。殺人者は安心してぼくの前で凶行を繰り返す。もし、そのぼくが読者のあなたにだけ、目撃したことを語れるならば…しかもドンデン返しがあって真犯人がいる。前代未聞の仕掛けで推理読者に挑戦する気鋭の乱歩賞作家の新感覚ミステリー。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
1992年に文庫として刊行された作品を読んで観た。
悲劇や不吉を呼び込むとされている怪しげな人形の視点から語られるパートを短いながらも織り込んだ、という実験的要素を感じた作品だった。あらすじにあるように全編を通して人形視点で描かれるわけではないものの、人形の語りが推理に繋がるように仕組まれているのだろう。
人形視点以外では主人公兼ヒロインとして水穂という女性が軸に語られるが、その語り口も悪くなく、描写も良くて、相変わらずとても読みやすくて読んでいて引き込まれる。こういうところの文章力は92年の時点ですでに確立されていたのだな、と思えた。
トリックや最後の最期でのどんでん返し含めてとてもよく考えられているように思えた。なんというか、あまり語ってしまうとネタバレになってしまうので難しいところだが、読了感も良くてミステリーとしても十分な出来栄えだと思う。
評価は、★★★★★(5点 / 5点)。ピエロ視点という奇抜さはあるが、そういった奇抜なことが出来るのもミステリーとして確固たる土台の上でやっているからなのだと思える作品。昨今の小手先だけのミステリーではない、ミステリーらしいミステリーがある。
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