水鏡推理

著:松岡 圭祐 発行元(出版): 講談社
≪あらすじ≫
正義感を発揮するあまり組織の枠を越え暴走してしまう文科省一般職ヒラ女性職員・水鏡瑞希。役所は彼女を持て余し、研究費不正使用を調査する特別チームに配属する。税金を掠め取ろうとする悪者の研究開発の嘘を見破れるか?抜群のひらめきと推理力を持つ美女公務員の下克上エンタテインメント!
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『Q』シリーズ、『探偵の探偵』シリーズとして当Blogでも何度も文庫本の感想を書かせていただいている松岡圭祐さんの新作。
全体的には、『Q』シリーズの雑学メインの部分と『探偵』シリーズの探偵らしさやややシリアスでハードな展開を足して三で割った感じ、かな。それくらい、既存作品に「似ている」部分が多く、それをポジティブに「松岡さんの作風」と捉えるか、ネガティブに「どの作品も名前とキャラが違うだけで大差ない」と捉えるかで評価は変わるだろう。
キャラクターは、基本的に『Q』シリーズに近い描写。細身だけどスタイルが良く長髪で目の大きな印象的な美人という点は、『Q』シリーズの凜田莉子、『探偵』シリーズの紗崎玲奈とほぼ同じで、個人的には「他のヒロインの引き出しはないのだろうか?」とさすがに首を捻る。相手役にしても「見た目はイケメンで優しいのだけど、知的には乏しい」という点は相手役のいた『Q』シリーズの小笠原悠斗そのものだ。
脇役の構成が違うことが辛うじて救いであり、新しいチャレンジか。ややネタバレになるが、最後には四人でのチームや団結感みたいなのがあって、これまで単独行動するキャラの多かった松岡さんの作品にしてはチーム感があってそこは良かった。
ストーリーとしてはやや陰鬱。相手を出し抜いたり、裏をかいたりする従来のシリーズと比べて中央官庁・省庁を舞台としている分だけそういった部分の終わり方での「しがらみ」がそういった感想に繋がってしまうのだろう。
また時折披露される雑学はそれ単体で観ると確かに驚きや感心があるのだけど、一方でストーリー上の必要性が薄い物も多く「それをひけらかしたいだけでは?」とも思ってしまう。
最後も確かに相手の不正を証明する「手段」としては良かったが、ちょっとご都合主義っぽく思えてしまった。
評価は、★★★(3点 / 5点)。まだまだ他作品と一線を引けるような差別化が出来ておらず、練り込み不足が否めない感じ。シリーズ化されるならそうした中で他の作品との差別化を図れるかもしれないが…。
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