遺跡発掘師は笑わない 出雲王のみささぎ

著:桑原 水菜 発行元(出版): 角川書店
≪あらすじ≫
次々と国宝級の遺物を掘り当てることから天才と呼ばれる若き発掘師・西原無量が派遣されたのは、神々の集う島根県出雲市。だが発掘現場の厳谷は、対立するふたつの旧家、降矢家と八頭家にゆかりの神域で、うかつに手をつけると崇りがある…と地元で囁かれている場所だった。不穏な空気の中、無量の手で青銅製の髑髏が出土。それと呼応するように、発掘現場では八頭家の跡継ぎ・孝平が遺体で発見されて…。シリーズ第2弾!
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『西原無量のレリック・ファイル』シリーズの第二弾。
前作から約一年近い時間が劇中で経った中での続編。前作と比べてもさらに手堅い印象かな。ちゃんとミステリーとサスペンスをしている、といえば良いと思う。この直近に読んでいた本が日常系ミステリーだったり、ちょっと出来がイマイチだと感じるものだったりすることが多かったので余計にこの「手堅さ」が読んでいて地に足がついている感じで心地よかった。
ミステリーとしてはトリックらしいトリックがあるわけではなく、一つ一つ不明な点を石橋をたたきながら渡るイメージ。謎解きミステリーというよりは正体不明の殺人犯におびえるサスペンス的な要素の方が強く、また田舎集落ならではでの閉塞感の強い空間の持つ独自の恐怖心みたいなものも良く表現されていたと思う。
話の題材としては三種の神器について語られるのでそこの壮大さが人によってはマイナスになってしまうかもしれない、というくらいか。
キャラクター面では大きな変化はない、か。相良忍が本格的に無量の味方としてカメケンに再就職したくらい、かな。無量や忍それぞれが家族に抱える闇や想いというものも随所に出ていたと思う。
そうした中で忍が終盤見せた冷徹なシーンは個人的なお気に入り。
評価は、★★★★★(5点 / 5点)。扱っているテーマが壮大過ぎる点や、ミステリーというよりサスペンスな点、忍のキャラが便利すぎる点などツッコみどころもないわけではないが、前作よりもさらに良くなっていると思うのでこの点数で。
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