新参者

著:東野 圭吾 発行元(出版):講談社
≪あらすじ≫
日本橋の片隅で一人の女性が絞殺された。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎の前に立ちはだかるのは、人情という名の謎。手掛かりをくれるのは江戸情緒残る街に暮らす普通の人びと。「事件で傷ついた人がいるなら、救い出すのも私の仕事です」。大切な人を守るために生まれた謎が、犯人へと繋がっていく。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪あらすじ≫
東野圭吾さんの中で『加賀シリーズ』とも呼ばれている中の一つ。私の中の印象はやはり一昔前のTBSドラマ版。といっても視聴していたわけではない。ただ印象の中で、阿部寛さんが主演を務めていたシリーズが人気を博していた、という印象があったので「まぁ、見たことないし」と思って手に取ってみた。
作品としては一つの殺人事件に対して、九つの章から切り込んでいく短編風の連載作。それぞれの短編は(ある意味当たり前だが)紆余曲折、あるいは遠回りをしながらも殺人事件に絡んでいくヒントをはらんでいる。それを加賀が一つ一つ解き明かしていきながら、殺人事件からは少し離れた人形町での人情味あるストーリーを紡いでいく、という感じ。
素晴らしいのは、前述のように一つ一つの章における小さな謎は、今で言う「日常系ミステリ」みたいなものでしかないのに、それらが最終的に殺人事件という「王道ミステリ」の謎解きに大きな意味を持ってくる、という点だ。こうした配置、あるいはこうした結末に収束するように描かれる構成力や文章力は素晴らしいのひと言に尽きる。
ただ調べてみると加賀シリーズでこのような体裁を取ったのはこの作品だけのようだ(たぶんだけど)。それがちょっと残念。
一人一人のキャラクターもとても魅力的。
評価は、★★★★★(5点 / 5点)。構成力、ミステリ、読後感、キャラクターいずれをとっても素晴らしい一冊。
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