蝶が舞ったら、謎のち晴れ: 気象予報士・蝶子の推理

著:伊与原 新 発行元(出版):新潮社
≪あらすじ≫
天気予報が大嫌いな気象予報士・菜村蝶子と幼なじみの探偵・右田夏生の元に舞い込んでくるささやかな、でも奇妙な依頼の数々。降らなかったはずの雨や半世紀以上前の雷探し、“誘拐”されたバイオリンや早咲きの桜に秘められた想いを解き明かす鍵は天気予報!明日の天気を願う時、それは誰かの事を想う時―。あなたの心の雲もきっと晴れるハートウォーミングお天気ミステリー。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
今の時代、ミステリー物で推理するのは刑事や探偵だけではない、というのは珍しくもなんでもない。有名なところでは物理学者だったり、法医含めての医者だったりするわけだが、この作品ではいよいよ気象予報士が謎解き役になったわけだ。
ストーリーとしてはしがなく冴えない私立探偵・右田夏生が抱えるちょっと不可思議な気象が絡んだ事件に対して、幼馴染である凄腕の気象予報士である菜村蝶子が解決する、というのが大まかな流れ。今回はその基本を軸として、序盤と最後に幼少期の回顧録を入れることでオムニバスの短編集となっている。
ただ、さすがに「お天気ミステリー」には限界があるような感じは読んでいて覚えてしまった。さすがに気象予報士だからこそ解けた謎、という要素がちょっと薄い。そこいらにいる有象無象のミステリー物に登場する探偵役なら出来てしまいそうなことばかりで、「気象予報士である必要性は?」と思ってしまう部分も多々。
もちろん、そうじゃない部分もあるにはある。例えば運び屋紛いの事件に巻き込まれた事件での台風のこととかね。稀有な気象現象ではしゃぐ蝶子とかちょっとかわいかったし。
ただ、割合的にはちょっと苦しいかな、というし
キャラクターとしては無愛想な蝶子と、お調子者の夏生のコンビは短編の中で一つのテンプレート的な物語を作っていくにはちょうど良く都合も良い。もちろん都合が良い、も褒め言葉だ。そうなるようにキャラクターを配置してストーリーを動かしているんだろうしね。
ただ物語の前後に幼少期の回想を入れた意味は若干薄いかな、と。シリーズとして続く前提ならまだしも……。蝶子が夏生をカタカナの「ミギタ」と呼ぶ理由など、幼少期のシーンを入れて行くならもう少しこの一冊の中で明かしておくべき部分があった気もする。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。主観で言えばキャラクターはどのキャラも好き。ただ「お天気ミステリー」と銘打つにはお天気要素とミステリーの掛け合わせ方にまだまだ発展途上中、という感じ。
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