地獄少女 二籠 第9話
地獄少女 二籠 第9話「あにいもうと」
<あらすじ>
大好きで大嫌い
優しくて残酷
愛しくて憎い
須崎真帆(すざき・まほ)には、そう思える兄・幹夫(みきお)がいた。すでに両親が他界している須崎家では、真帆にとってたった1人の肉親。それでも抱く憎悪の気持ちは、近親憎悪と呼ぶには生易しいものだった。
その日も真帆は、彼氏に別れ話を切り出されていた。原因はすでに解っている。
他に好きな人が出来たから。
真帆が彼氏や自分に気のある男友達から別れ話をされるのはいつものことだった。そして、理由もいつも同じ......。
彼氏と別れた次の日の朝、いない親に代わって家事全般を担当している幹夫は必死に真帆を励まそうとしながら、味噌汁を真帆に出す。
「「あっ」」
味噌汁が注がれた御椀を受け取ろうとして指と指が触れ合っただけで声を上げる2人の姿は、端から見れば純朴な恋人同士にも見えなくないほど。
そんな兄と妹の生活が変わり始めたのは、真帆に言い寄る別の木崎(きざき)と言う真帆と同じゼミの男が現れてからであり、そしてあいと一目連が真帆の前に現れてからだった。
続きはOPENからどうぞ。
<あらすじ・ネタバレ>
地獄通信にアクセスし、あいと、そして一目連と会う真帆。藁人形を受け取り、あとはいつでも糸を解くだけ。そんな真帆に、一目連は興味を抱く。
一方、女性顔負けの美貌で活躍する大人気のモデルの幹夫は、ちょうどその木崎と言う男が、真帆をマンションまで送ってきたのを目撃した。表面上は、妹想いの物分りの良い兄としての表情を見せながらも、その眼は明らかに敵意が宿っていた。
「毎晩遅くまでカラオケボックスでバイトしてるんだって。偉いよね」
真帆の言葉で何かを決意する幹夫。だが、それを真帆は知っていた。夜の公園で真帆は一目連と会う。観察していると言う一目連に、真帆は今夜兄が動く、とだけ教えた。
真帆の思惑通り、幹夫は動いた。真帆はおろか女性が自信をなくしてしまいそうなほどの絶世の美女に成り代わったミキこと幹夫は、真帆に言い寄る木崎の勤めるバイト先に顔を出す。飲み物をこぼすフリをして、相手にこちらから気があることをアピールしたら、木崎は真帆に告白していたことさえ忘れて男とも知らず、あっさりとミキに心も身体も傾いた。
幹夫が少し度の過ぎた妹思いだと思っていた一目連は、軽くショックを受けていた。「人間の業ってのはキリがねぇ」と呟く輪入道の言葉を一目連が聞いている頃、マンションには朝帰りの幹夫が帰ってきた。朝シャンをしていた真帆は、何をしていたのか想像はついていた。予想通り、その日のキャンパスで木崎からは告白を無かったことにしてくれ、と言われた。
もう、知らぬフリをし続けることは、真帆には出来なかった。
自宅に帰ると、夕飯の支度をしている幹夫の隙をついて兄の部屋に忍び入る。兄が、使っているバッグの中からは、女性用のワンピースとそして付け髪が。
「どう?」
兄が自分の彼氏を奪おうとして使ったワンピースを敢えて着て出て来る真帆。その姿に、幹夫は撮影用で真帆に似合うと思って……と呈の良い嘘を吐くが、真帆は全てを知っていた。
「似合う?」
「に、似合うよ」
「……嘘。お兄ちゃんの方が似合うくせに」
真帆は、全てを暴露した。幹夫が女装していること、そして女装して真帆の彼氏を寝取っていることも全部知っている、と。
「どうして私の彼氏なの! 他の人じゃだめなの!?」
兄が同性愛者だと思っていた真帆。だが、それは違った。いや、もしかしたら真帆は兄の本質を知っていたのに、敢えてそれを知らないフリをしていたのかもしれない。同性愛者などではない。本当の兄の想いを。
「……好きなんだ。……真帆が、好きなんだ」
そう、幹夫は同性愛者などではなかった。幹夫が望んだのは、妹の真帆だったのだ。だから、真帆に言い寄る男が許せなかった。それは純粋な嫉妬だった。
思いの丈を暴露したことで、歯止めが利かなくなって真帆を押し倒してしまう
幹夫は、自分が真帆を傷つけていると知ると、「仕事に行ってくる」と嘘を吐いて家を飛び出した……。
「道に迷ってるんだ……助けて。助けて、地獄少女」
妹を女として愛してしまった兄。人の道に外れていると思ったのだろうか。真帆は、藁人形の糸を解いた。
女装して夜の街に飛び出した幹夫。鏡に写る自分を見て、「女でいなくちゃいけない。真帆を傷つけないために」とミキでいることを決意する幹夫。外見では男とは思えないほどの美貌を夜の街をはびこる男が放って置くはずもなく、そう決意したものの数分でホテルに誘われた。真帆に手を出す男がこの世から一人でも減るならば、とそれを受け入れる幹夫。
そこに現れる一目連と輪入道。輪入道は大きな鏡に変身すると、男としての幹夫を映し出す。ブラックホールのような鏡の奥には、真帆の姿―――いや、そう見せかけて登場したのはあいだった。
「いっぺん、死んでみる?」
地獄へと流れる中、幹夫は平然としたままそれを受け入れていた。
「これで、真帆を傷つけなくてすむ」
どこまでも妹である真帆を妹として女として愛し続けた幹夫の末路だった。
一方、幹夫が地獄に流れた須崎家では、一人ぼっちになった真帆が兄の部屋でこれまで女装に使っていた服を眺めていた。胸に刻まれた地獄印。真帆は、契約を結ぶ時、これがなくても今の自分は天国にはいけないと言っていた。真帆は、最初から知っていたのだろう。兄が自分を女として見ていることも、そして自分が兄を男として見ていることも。
「すぐに行くから……」
失って明確に気づいた兄への男としての気持ち。
「妹であり女、兄であり男。その間で迷っちまったのかねぇ、あの2人は」
藁人形としてずっとこの兄と妹の傍にいた骨女は、ただそう呟き、2人を見続けた一目連はマンションのその部屋をただ見上げていた。
<感想>
お仕置きシーンふっかーつ!!
━━キタヨキタヨヽ(゚∀゚=゚∀゚)ノキチャッタヨ-!!!!!!━━━!!!とは言っても、ほんのわずかでしたけどね。おまけに幹夫が地獄に流れることを受け入れてましたし。
推測ですが、あらすじでも補足したように真帆は最初から全部知っていたんだと思います。兄が自分に向ける想いも、自分が兄へ向ける想いも、全て。太陽と月、光と影、そんな相反する気持ちはきっと妹としての感覚と女としての感覚なのでしょう。
なぜなら真帆は全て知っていたのに、それでも敢えて男にマンションの前まで送らせ、男のバイト先を幹夫に教えていたから、です。
これこそが、私の推測の証拠。もし、幹夫のしていることを知って兄を単に憎悪しているのであれば、男の存在を幹夫の前で言う必要性はない。ましてや、男のバイト先を教えるなんて、幹夫に「ここにあなたの真帆を狙う男がいるから、どうぞ寝取ってください」と言っているようなもの。そんなことを敢えてする、と言うことは、真帆は真帆できっと幹夫の行動に怒りを覚える一方で、嬉しいとも感じていたんだと思います。
幹夫が、自分ではない他の誰か別の男と自分(真帆)が一緒にいることに嫉妬している。
たぶん、これは普通に嬉しいのではないでしょうか? 恋人やあるいは気のある人が、そうやって嫉妬してくれることって。だから真帆は、妹として彼氏を寝取る兄に怒りを覚える反面、一人の女の真帆として他の男が近づくことに嫉妬する幹夫に嬉しさを覚えていたはず。だからこそ、幹夫はあんなことをしていたわけで、そして真帆はそうして欲しくてわざわざボーイフレンドのバイト先を教えるわけですから。
骨女が最後に言った通り、この2人は肉親であることと、それ以前に人間として男女であることの間に囚われて身動きが取れなかったんだと思います。もし、2人一緒にどっちかに完全に傾いてさえいれば、今回のようなことにはならなかったかもしれませんね。と言うか、ならなかったでしょう。
ラストは、間違いなく真帆は自殺したでしょうね。兄を失って、真帆は幹夫を改めて兄としてではなく男として実感しているような感じでしたし。
と言うか、幹夫に寝取られた男は、つまり幹夫と寝たのか? わざわざ次の日になって、真帆に別れを持ち出すくらいだからなぁ……。相手が男だと判ったら、踵を返して真帆の下に戻ろうとしないのだろうか??
次回は「曽根アンナの濡れた休日」。えっと、閑話休題? 主役は曽根アンナこと骨女。曽根って骨女の人間界での仮名なんですね。てっきり、前回っきりの使い捨ての名前だとばかり思ってました(前回は、曽根と言う体育教師として中学校に潜り込んでいる)。
<MVC>
骨女
「妹であり女、兄であり男。その間で迷っちまったのかねぇ、あの2人は」
何となく、このセリフが一番印象に残ってました。例え方が、気に入ったんだと思います。あの2人を、劇中では描かれなかったものの藁人形として傍にい続けた骨女だからこそ言えたセリフなのかもしれません。
番外編
一目連
「俺ほどじゃないがいい男」
なんか、一目連がいつもよりはっちゃけてます。まぁ、本質はこう言う男だったんでしょうから、全然違和感が無いわけですが( ̄∇ ̄;)
<TB先 参照リンク(URLアルファベット順)>
・http://blog.livedoor.jp/koubow20053/archives/50681977.html
・http://blog.livedoor.jp/kuma_road51/archives/50840664.html
・http://blog.livedoor.jp/natsu_ki00/archives/50462502.html
・http://blog.livedoor.jp/radical_weapon/archives/50783667.html
・http://blogs.yahoo.co.jp/mireiyumoe2/44111938.html
・http://chalcograhie.blog21.fc2.com/blog-entry-1942.html
・http://futarinoneko.blog61.fc2.com/blog-entry-434.html
・http://hashinomierufuukei.blog41.fc2.com/blog-entry-808.html
・http://omochiyasan.blog69.fc2.com/blog-entry-391.html
・http://penpen-shogi.moe-nifty.com/sasayaki/2006/12/post_698f.html
・http://raitoningu.at.webry.info/200612/article_2.html
・http://rincolu.blog15.fc2.com/blog-entry-1030.html
・http://seraraku.blog58.fc2.com/blog-entry-274.html
・http://takoyaki-tako-tako.de-blog.jp/takotako/2006/12/post_439f.html
・http://yuima.blog6.fc2.com/blog-entry-619.html
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