聖女の救済

著:東野 圭吾 発行元(出版):文藝春秋
≪あらすじ≫
資産家の男が自宅で毒殺された。毒物混入方法は不明、男から一方的に離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。難航する捜査のさなか、草薙刑事が美貌の妻に魅かれていることを察した内海刑事は、独断でガリレオこと湯川学に協力を依頼するが…。驚愕のトリックで世界を揺るがせた、東野ミステリー屈指の傑作。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
ガリレオシリーズの一つ。本来なら「容疑者Xの~」辺りを読むのが順当な順番なのだろうが、そっちはもう実写版を観てしまったので。
ガリレオシリーズの長編だが、若干毛色が違う。基本的に軸となるのは草薙と内海という二人の刑事。おなじみの草薙と、女性刑事にして聡明な頭脳と理解力を持つ内海が、全く違う見解を同じ事件に持ってぶつかり合う。面白いのは草薙が被害者の妻に少なからず惹かれてしまっている点だろう。普通に二人の刑事の意見のぶつかり合いなら、通常キャラとして出番の長い草薙に肩入れする人が多いはずだ。
だが草薙が被害者の妻に魅かれてしまっていて意固地になっている部分がある。だからこそ、正論、正しい形での推理をする内海に読者としても少なからず思い入れが出来る。まぁ、その内海もやや固執している部分があって、だからこそ客観的に物理的・科学的にアレコレと言える湯川が活きるし、耀く。
ハッキリ言えば湯川の登場回数自体は決して多くない。だが、いつもと同じかそれ以上にインパクトがある。それは彼が必要最低限な形でしか関わっていないこと、彼が内海にだけ加担するわけではないこと。
そういった部分が非常に良い。
トリック自体も面白い。確かに合理的ではないトリックだったとは思う。けれど、合理的ではないけれど不可能ではない。その不可能ではないトリックを可能にした犯人の執念や労力を考えると、こういうこともあり得るのだろうと思ってしまう。
評価は、★★★★★(5点 / 5点)。個人的にはガリレオシリーズの中では最高の出来。
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