難民探偵

著:西尾 維新 発行元(出版):講談社
≪あらすじ≫
就職浪人の窓居証子は、祖母の助言で人気推理作家の叔父・京樹の雑用係として就職活動を続けることに。叔父に持たされた携帯電話に連絡してきた警察は、京樹の友人の根深陽義を保護しているので引き取ってほしいという。警視の肩書きを捨ててネットカフェで暮らす根深によって、証子は殺人事件の捜査に巻き込まれる羽目に。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
2009年に単行本として発表された作品の文庫化。単行本未読。
西尾さんの作品ということで手に取ったし、「難民探偵」というのも面白いタイトルだった。ただ、中身は……何と言えば良いのか、良く言えば定石をしっかりと使っていて、悪く言えば普通だった。
2009年といえばもう6年も前の作品だ。作家さんにもよるだろうが、6年もあって、その間にスランプやらなんやらで執筆していないならまだしも、ガンガン筆が進んでいる作家さんなのだから、6年前の技術に対して今更アレコレ言っても仕方ないのだとは分かっていたとしても、ちょっと構成としてどうなの? とは思ってしまった。
とにかく事件にとっかかるまでが長い。あらすじを読んでいただいて最初の一文である「就職浪人の~就職活動を続けることに」までを描くのに50ページ弱近くもかかり、そこからもとにかくテンポが悪い。テンポが悪いというか、「書くことをとにかくひたすら、全部書く」みたいなスタイルなのか、とにかく地の文章が長くてまどろっこしい。
もちろん、その利点が全くないわけではない。例えば世間に対して、就職に対して、働くと言うことに対して、警察に対して、そして執筆活動やそれを行う作家というものについて、西尾維新さんなりの持論がたくさん詰まっているともいえる。そんな西尾さんのファンで西尾さんがこの当時そういったことにどういう考えを持っていたかを知りたい方からすればいろいろと知れて良いことなのだろうが、単純にミステリー小説として、あるいはエンターテイメントとしてのノベルスとして楽しみたい者からするとやっぱりテンポが悪い。
ミステリーのトリック自体は普通だった。でも、個人的にはこれくらいなら良いかなと思っている。もちろん、奇抜で誰も想像もしないようなトリックや裏をかく工作っていうのは読んでて面白いのだけど、一方で奇を衒い過ぎて「それはないだろ」と思ってしまうようなこともあるので、そうなってしまうくらいならフツーなくらいの方がまだいい。
まぁ、ただこの作品の場合長すぎるのでトリックくらいはもう少し、とは思うが。
評価は、★★(2点 / 5点)。とにかく無駄に長く引っ張るので間延びしていてテンポが悪い。今西尾さんがサクサク書けば半分くらいに纏められてしまうんじゃないかと思ってしまうほど。
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