涼宮ハルヒの暴走

夏・秋・冬と、SOS団発足当初の春を除く3つの季節を題材にした短編集です。秋のみアニメで放映された『射手座の日』で、夏と冬は『エンドレスエイト』『雪山症候群』と原作のみのもの。ここまで来ると、アニメからはだいぶかけ離れてきますね。
では、感想はOPENからどうぞ。
○序章・夏~エンドレスエイト
<あらすじ>
お盆を過ぎた辺りから、普通の高校生・キョンは何かがおかしいと感じていた。夏休みもクライマックスに差しかかろうかと言う8月半ば過ぎから、SOS団団長で世界に多大な影響を与える力を持つ女子高生・涼宮ハルヒによるイベントオンパレードの中、キョンは強烈な既視感(デジャブ)を感じ続けていた。そんなある日の深夜、SOS団専属マスコットであり未来人の朝比奈みくるから電話がかかってくる。なんでも未来との連絡が取れないらしい。そして、同伴していたSOS団副団長にして超能力者・古泉一樹はハッキリと言った。
「僕たちは終わり無き夏休みのまっただ中にいるわけですよ」
そして、キョンが誰よりも信頼する万能宇宙人製対有機生命体用ヒューマイノイド・インターフェースの長門有希も断言した。
「今回が、一万五千四百九十八回目に該当する」
キョンたちの、エンドレスサマーから抜け出す模索が始まった。
<感想>
個人的には、今回の短編集の中で一番面白かったものかもしれません。エンドレスサマー……本編タイトルは、8月の「8」を取ったからかエンドレスエイトですが、何にしても個人的には理想的ですね。いや、たぶん当事者になったら相応に困るんでしょうけど、端から見ている側としては( ̄∇ ̄;)
キョンが夏休みのラストに捻り出した「夏休みの宿題を皆で集まってやる」と言うアイディアは、なかなかにリアリティがあります。とは言え、実は私は夏休みの自由研究で共同研究をした以外では、宿題を皆でやると言う自体は小学から高校までで2~3回くらいしか無いですが( ̄∇ ̄;) 高1~2の2回の夏休みだけは、ハルヒ同様7月中に宿題を全て終わらせた記憶があります(ぉ まぁ、さすが高3の夏休みは受験勉強でしたけど。
○序章・秋~射手座の日
<あらすじ>
文化祭が終わって数日が経ったある日、ハルヒだけでも手一杯と言うのにわざわざ厄介ごとを持ち込むように、SOS団部室のドアをノックする音が。ドアの向こうにいたのは、隣に部室を構えるコンピュータ研。彼らは、ハルヒに半ば強引に奪われた当時最新型だったPC奪還のため、SOS団に自作ゲームによる勝負を挑んできた。
「インチキをするのはやめておこう」
勝負を喜んで受けたハルヒを見つつ、キョンは長門や古泉にそう断言した。正々堂々勝負して、それで決着をつけようとしたのだ。SOS団はハルヒの突撃のみの命令でよほどの相手でない限り勝てる道理はない。そろそろ、ハルヒも現実を知るにはいい頃だ、と。
勝負当日。
SOS団は窮地に立たされていたが、そこでハルヒ以上の並々ならぬやる気を見せたのは、なんと長門有希だった。
<感想>
TVアニメでも放映され、かなり大好評を得たはずの話ですね(特に長門ファンには)。率直な感想としては、コンピ研の卑怯っぷりが原作だとパワーアップしていたのに、驚きました( ̄∇ ̄;) アニメだと普通に索敵モードがオフになっていただけなのですが、原作だとワープ機能まで付いていて、確かにそりゃあ勝ち目なんてありゃしないよ、と思いました。
SOS団側の実情を見ているからかもしれませんが、ぶっちゃけ、そんなことしなくたって普通にやっても勝てた気もするんですけどね、コンピ研。策士、策に溺れる、といった感じですかね。個人的には、ハルヒが賭けの景品として有希を指名した時のキョンの「パソコン4台と長門ではスペックに開きがありすぎるぞ」と言う独白がお気に入りのフレーズです。
○序章・冬~雪山症候群
<あらすじ>
年末の12月30日。ハルヒは、夏休みの孤島の時に宣言した通り、雪山合宿を敢行した。場所の提供者は、みくるの同級生でハルヒによってSOS団準団員にして名誉顧問の鶴屋さん。キョンの妹まで巻き込んで、SOS団+αの一行は雪山へ合宿に。
スキーが滑れないキョンの妹と、その相手をしてくれる鶴屋さんを残し、SOS団正規団員はリフトでスキーを楽しむため、雪山へ。だが、途端雪山は吹雪に変わる。何とか見つけた広い屋敷に避難したSOS団だが、様子がおかしい。万能端末である有希も、親元である統合思念体との接続をカットされたため能力に制御、そして身体に負荷がかかっていて事態解決に参加出来そうにない。それでも、有希は脱出策としてパネルと数式を残していた。
キョンは古泉と共に、屋敷、そしてこの異常空間からの脱出を試みる。
<感想>
夏を舞台とした孤島症候群のあのハルヒの一言が本当に伏線としてお話が作られてしまうのが、すごい。各所に張られた伏線をしっかり回収していくので、最初から読んでいる人からするとその前後で「これはああいう意味だったのか」「この言葉は、あれを意味していたのか」と知ることが出来るのも、もしかしたらこの『涼宮ハルヒの~』シリーズが、人気を保っている理由なのかもしれない、とこれを読みながら思いました。
雪山症候群では、あの長門有希が能力を封じられる、と言う事態。なんか、最近フツーに活躍しているのは、ハルヒではなくキョンでもなく実は長門なのではないだろうか、と真剣に思い始めました( ̄∇ ̄;)
個人的に、最後のトリックは意味不明でしたね。古泉が解説してくれるのを、ふんふんと読んでて「あぁ、なるほど」とようやく解りました。数学系は苦手ですorz
結局、こんなトンデモなことをした正体は、この短編内では明かされませんでした。もしかしたら、これが今後の伏線になっているのかもしれません。
<見所>
全体を通しての見所ですが、エンドレスエイトのキョンの思いつき(夏休みの宿題云々)、雪山症候群の古泉の推理、でしょうか。どちらも、答えを何とか導き出そうとして導き出した、と言う意味で展開は同じですが、答えを導き出したのがキョンか古泉か、の違いです。
個人的に、そういうことをアニメでやっているせいか、こう言う推理系のネタが絡む話は、当社比1.5倍で楽しんで読めている気がします。
キョンは一人称の語り口なので置いておくとして、この『暴走』の中だと特に異彩を放っていたのはやはり長門有希だったと思います。まぁ、それは『消失』から解っていたことですが。だからこそ、最近は、ハルヒ以上に長門がヒロインな気がしてなりませんσ(^◇^;)
『暴走』読破~。次は『動揺』だったかな、何だったかなと思っていますが、ちょっと真面目な就活関係の本が次は控えているので、少しお休みかもしれません。出来るなら、年内にあと1冊くらい最低読みたいかなぁ、と思っています。年が明けると、しばらくそんな暇がなくなりそうなので。
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