京都寺町三条のホームズ

著:望月麻衣 発行元(出版):双葉文庫
≪あらすじ≫
京都の寺町三条商店街にポツリとたたずむ、骨董品店『蔵』。女子高生の真城葵はひょんなことから、そこの店主の息子、家頭清貴と知り合い、アルバイトを始めることになる。清貴は、物腰は柔らかいが恐ろしく勘が鋭く、『寺町のホームズ』と呼ばれていた。葵は清貴とともに、客から持ち込まれる、骨董品にまつわる様々な依頼を受けるが―古都を舞台にした、傑作ライトミステリー!
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
双葉文庫から出ている一冊。ネット上に小説などを投稿出来るEエブリスタとかいうサイトに公開されていた(?)ものを書籍化したもの、だと思う。詳しいことは良く分からなかったんだけど。
まぁ、『SAO』などもあるので、この手のパターンの書籍化ももう珍しくもないか。
本編は埼玉から京都へ転居・転校してきたものの遠距離恋愛に失敗し彼氏にフラれて傷心の真城葵が、京都大学院生で聡明で超イケメンで合気道を修めててちょっとだけいけずなところもあるが性格も良い紳士的な家頭清貴と出会って日常の事件を目の当たりにしていく、という感じ。
こういう風に書くと、普通に少女漫画を小説にしただけにしか聞こえないね。とはいえ、実際問題中身もそんなものなので間違っていないのだけれどね。
キャラクターに関してもそんな感じだ。少女漫画に出てくる理想の王子様を描いている。何の変哲もない普通のどこにでもいそうな男が美女や美少女に言い寄られるハーレム作品と同じだ。あちらを男子の夢だと仮定するなら、こちらがたぶん女子の夢ってものなんだろう。
ライトミステリーというがこちらはかなりミステリー色が薄い。ホームズこと家頭清貴がちょっとした言動ですべてを察知してしまうほどなので「探索して情報を見つけ組み合わせて推理して真相に辿り着く」という経緯はゼロに等しい。一を知って十どころか百まで知ってしまうのである。
ある意味では犯人の言動から初対面で犯人の目星をあっさりつける古畑任三郎に近いといえば近いのだろうが、あちらと違って「つまずく」ことや「悩む」ことがないのが難点。
文章はネット上に公開して添削や修正をしていたのかネット上で言われているほど悪いとは思わなかった。冒頭でいきなり心の声を描くのに()を使ってしまう辺りに大きな不安を覚えたがその後は無難に……というか、まぁ及第点として纏まっていたし、変に難解な文章や曲解する文章を描く作家さんよりはずっとストレートで読みやすい。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。完璧超人な大学院生と平凡な女子高生という在り来たりなキャラ設定だが個人的には悪くなかった。マイナス1.5点分はほぼ全てミステリー要素の弱さ。「ライトミステリー」を語るなら8月に発売が決まっている続巻ではその大きすぎる欠点をどこまで補えるかが勝負だろう。
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