学生街の殺人

≪あらすじ≫
学生街のビリヤード場で働く津村光平の知人で、脱サラした松木が何者かに殺された。「俺はこの街が嫌いなんだ」と数日前に不思議なメッセージを光平に残して…。第2の殺人は密室状態で起こり、恐るべき事件は思いがけない方向に展開してゆく。奇怪な連続殺人と密室トリックの陰に潜む人間心理の真実。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
東野圭吾さんがデビューして割と序盤(?)の頃のものなのかな。
作品としてはあらすじの通り。そうした中で一つに見える事件が実は二つの事件で、けれどそれらの事件が全く繋がっていなかったかというとそうでもない、という二重・三重に凝らした作り方が上手い。上手いというか良く練られているというべきなのか。
主人公の内面が割と淡白だったな、というのが読んだ時の感想かもしれない。恋人……と呼んでいいか分からないが、それに近いような遠いような微妙な関係とはいえそういう彼女が殺された。その際のショックの大きさは「あぁ、うん。そうだよな」という感じだったけど、時間の経過のせいなのか少しずつ淡白になっていった感じだった。
まぁ、それでもとある人物に対して憎悪にも近い「許せない」の言葉を残すなど、ちゃんと感情のあるシーンもあるんだけどさ。でも、身内とも言うべき身近な人たちが事件に関わっていた中でそれを暴いていくといく、その過程や心理描写みたいなのが淡白な感じだったかな、と。
もちろんそれが良いとか悪いとかじゃないんだ。ただ、淡白だったっていう感じ。だからこそ主人公は探偵役なり得たと思うし、一方で殺された恋人との在り方に切なさを感じるのかもしれない。
そういう中で最後にオーストラリアに旅立つのは、彼の中で未来というものがようやく見え始めるような終わり方というのは良かったと思う。
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。-0.5点は父親とのシーンを経てのオーストラリアENDっていうのが個人的には……ってところかな。あと、結局これだけの事件を経て何を得たのかな、というのは微妙なところだったかも。
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