探偵の探偵Ⅲ

≪あらすじ≫
悪徳探偵を「駆除」するためにまったく手段を選ばない玲奈は、警察から常時マークされることになる。玲奈は監視をかわしながら、自分と家族の人生を破壊した「死神」を追い続ける。ついに姿を現した死神の驚くべき正体とは。あまりに過酷な闘いに、はたして玲奈の心は持ちこたえられるのか?
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
地上波の連続ドラマ化とコミック化が決まったらしい本作。いよいよドラマやサブカル業界も原作不足によってこういう作品にも本格的に手を出してきたんだな、と言う印象。まぁ、『氷菓』とか『ドS刑事』とか前々からあるけどさ。
それにしてもコミック化はともかく連続ドラマでやれるのか、これ(苦笑
どの時間帯の連続ドラマになるのかにもよるが、過激な部分なんかはマイルドに改変して行くのかな。それだと意味がない気もするが。
さて、本作。いよいよ「死神」との対決となる。相変わらず玲奈たち主人公側が結果的に背負い込んでいる負債と、犯人側にもたらした結果という部分がアンフェアな感じ。特に「死神」との決着において死(殺人)という部分を持ってこない部分は、本作をダークに描いていて尚且つ玲奈にとって復讐すべき最大の相手だった割に詰めの甘さというか中途半端さが否めない。
どこまでも深く、暗く、闇に染まる人の本性や裏の顔をダークに描きたいけど殺人はさせないよ。あ、でもその代わりに主人公側の人間は殺すときは殺すよ、って感じ。それが編集側との制約なのか、作者が自分に課している制約なのかは知らないけどダークなハードボイルドとして描くならそこは踏み込まないといけないと思うし、それが描けないならどうなの? と。
相変わらず玲奈は頭が良いのか悪いのかも微妙。知識は豊富でトリビア的な技術も発揮するんだけど、そこまで出来るなら敵を追い詰めた時の反撃や行動も最悪を想定していそうなのにその想定が出来ているようには見えないほど弱い。女だから弱いって感じじゃないんだよね。肉体的、身体的な差で負けて死にかけているというより、準備不足で勝手に死にかけてるって感じ。
玲奈に関しては悪い部分というか粗の部分ばかり目立つがそれだけというわけでもない。法を犯して捕まりはしなかったけど玲奈だけど抜けられない蟻地獄へ、という感じで探偵業(調査業)にずぶずぶと抜け出せない感じは良くも悪くも自業自得ということなのだろう。主人公として感情移入して観るとあまりに非情な展開と結末だが、一方で自分の望みのために悪いことにも手を染めて行く人間の末路としてはこの上なく正しい末路。
っていうか、みんなそうなんだよね。登場人物がみんなそんな感じ。それでも、自分の想いを信じて自分の想いを自分勝手に貫く。それを是と感じるか非と感じるかで評価は分かれるかもしれない。
あの琴葉ですら、そうなってしまう。1巻を読んだ時琴葉がここまでのキャラクターになることは正直想定していなかった。ぶっちゃければ単なるゲストキャラだと思っていたほどなので、そういう意味で3巻での琴葉の優柔不断さ、玲奈への裏切り、けれど最後はまるで自分だけが玲奈の理解者だと言わんばかりの腹立たしい立ち振る舞いと、大きく化けたキャラクターだな、と思えた。
シリーズが続くならいずれ琴葉も玲奈と同じように自分の取った言動によってその言動にふさわしい末路を迎えるんだろう。というか、そうなってもらわないとここまで化けた意味がない気がするし、対探偵課同士としていずれ戦う時もこの作品なら来るのだろう(他の作風の作品ならこの二人だけは絶対に戦うことはない、と言い切ることも出来たかもしれないが)。
最後に「死神」との決着を良い意味であっさりと持ってきた部分は評価したい。いつまでも長々と引っ張られても読者として面白い話題ではないし、個人的には4~5巻くらいまでは「死神」編かと思っていたけどそういう意味ではしっかり一区切りつけて来たところはさすが。
まぁ、その「死神」を教えた人が今度のターゲットになるのはちょっと際限なくなりそうで怖い選択でもあるけど。
評価は、★★★(3点 / 5点)。相変わらずグロさのバランス感覚がおかしいけど、キャラクターの化け具合や決着の着き方が前巻よりはずっと良かった。
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