櫻子さんの足下には死体が埋まっている 謡う指先
- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[櫻子さんの足下には死体が埋まっている]

≪あらすじ≫
北海道・旭川の冬。僕・正太郎は、櫻子さんと親しい薔子さんに頼まれて、旭岳にある別荘に行くことに。別荘の持ち主の遺品整理のためだ。驚いたことに、骨と謎にしか興味のないはずの櫻子さんも一緒に。さんざん雪山で遊んで別荘に戻ると、暴風雪のせいで停電がおきてしまう。しかも暖炉の中から、熊の手の骨に紛れて、人間の指の骨が見つかって…(「凍える嘘」)。美しく甘い冬の謎たちを閉じ込めた、大人気キャラミステリ!
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
ここ最近、この手の小説のメディアミックス化が進んでいる。すでにコミカライズ、実写映画化を果たした『万能鑑定士Q』シリーズはそうだが、この作品もコミカライズは決定、そしてアニメ化企画も進行中とのこと。さらにこのサイト的に言えば『ドS刑事』シリーズも実写ドラマ化決定とか。まぁ、表紙だけはラノベみたいなものだからね。
ただ、この作品、果たしてコミカライズに向くのかな、という疑問はある。キャラクターは美形揃いだから映像映えはするだろう。しかし、遺体や骨なんかを扱ってこその作品だ。そこの描きが中途半端になるならそのアニメ化の作品の雰囲気も中途半端になるだろうし、一方でそこを描くと一般受けするような描写にならないような、とも。
まぁ、それはともかく本作。短編三本構成で構成は従来通り。視点として、百合子視点があるのが面白い点。ただ百合子も櫻子たちと付き合っていける感覚の持ち主だけあって、結構変わり者な一人称視点だったのは必ずしもプラスではないだろう。
なんというか想像していないくらいの退廃的な部分さえ感じてしまったし、その癖に正太郎少年並みの正義漢があるから本当に青いな、と。でもこれはこれで一つの味、か。
彼女絡みで言えば、正太郎少年・百合子・今居の三角関係がどうなるかも気になるところだが、勝負はほぼ決しているのかな。百合子の目から見える「館脇正太郎」の様子を見る限りでは、ね。
作品としても、花房のことはほとんど絡んでいるようには見えない内容だったが随所に影が見え隠れする感じが、なかなかにホラーで雰囲気が良い。誰に対しても疑心暗鬼になりつつある正太郎は今後の伏線だったりするのかな?
しかし、残念だったのは前作で櫻子たちにとって亡き存在である「惣太郎」の代わりでも構わないと受け入れたはずの正太郎は、今回は一転してそれを拒否しているかのような描写だ。彼は惣太郎の代わりで良いと思ったのではなかったのか。それが櫻子たちの幸せや、あるいは理性・倫理の歯止めになるならそれで良いと。
ならば、今回耕治が櫻子に正太郎をどう想っているのかを問うても、堂々としていて欲しかった。「僕は惣太郎の代わりであることを受け入れ、自ら望んでいます」と言って欲しかった。少なくても嫌だと首を振り、泣くことを望む読者がどれだけいたのだろう、というのはあくまで個人的な疑問だった。
前作経緯がないならこれでも良い。でも、前作の経緯をシリーズを通して読んでいる読者からすると「じゃあ、前作の決意はなんだったの」と思ってしまう。っていうか、マジで何だったんだろうね、ほんと。こういうところ、この作品はとにかく安定しないんだよね。
プロローグとエピローグは今後の伏線なら「まぁ、仕方ないか」くらいの感じ。伏線になってないなら要らなかったかな。特にすでにヘクターという犬要素がある中で新しい犬の存在の追加は正直微妙だった。
評価は、★★☆(2.5点 / 5点)。シリーズ作であることを疑うような展開や内容もあるが……とりあえず、骨を扱ったシーンが多かったのはこの作品らしいかな、とは思った。
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