ナミヤ雑貨店の奇蹟

≪あらすじ≫
悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
人気作家・東野圭吾さんの一冊。描かれる小説が割と多種多様で多彩な方なので巻数が多く、逆に手を出しづらい感じだったのだが、自分で手に取ったわけではないけどたまたま読むことが出来る機会を得たのでちょっと読んでみた。
ひと言でいえば「奇蹟」。タイトルのまま。
よく言えば「奇蹟」だし、穿った見方をすれば「酷いご都合主義」という感じ。あらすじにあるように複数の案件(悩み相談)を話の軸としているのだが、その全てが何らかの形で一つの児童養護施設や、その悩み解決をしていた雑貨店に絡んでいき、その雑貨店と児童養護施設も……と、「世間は狭いなぁ」なんて言葉では生ぬるいほど濃密にすべての要素が一点に集約していくように描いている。
私はこれを「構成が上手い」とは評価しない。これは構成が上手いとかそういう次元の話じゃなくて、もっと単純に「ご都合主義だろうとなんだろうと、これは『奇蹟』の物語なんだからこれで良いんだよ」という初志貫徹さというか、意志の強さの方こそが評価されるべき点なきがしてならないからだ。むしろ、その一点こそがこの本の凄さのような気さえする。
もちろん名実ともに現在、第一線で活躍される超人気作家の方が描く本だけあって文章力というか文章の巧さと読ませる文章を描く力の両立の凄さというのは言うまでもない。でも、だからこそそういったテクニックのような部分、トリックのようなアイディアの部分ではなくて、単純に「奇蹟の話を描く」という一点への情熱と言うか意志の強さみたいなものが特に際立ったんじゃないだろうか。
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。0.5点のマイナスポイントは、先に挙げたように全てが繋がり“過ぎる”点は人によっては不評となるかもしれない、と思ったから。私も上記では絶賛しているが、そういう感覚がゼロというわけでもないので……。ただ、4.5点というのは極めて高い評価であることは変わらないし、物語としては心温まるようなストーリーが多いので万人受けしやすく薦めやすい一冊であることに違いはない。
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