ドリームダスト・モンスターズ 白い河、夜の船

≪あらすじ≫
他人の夢に潜る「夢見」能力をもつ高校生の壱。事故で母親を失い、悪夢に悩まされていた同級生の晶水も彼に助けられた一人。壱の祖母・千代が営む“ゆめみ屋”を、今日も夢に悩むお客が訪れる。夢の中で見知らぬ女性に恋する大学生、人を殺すよう命じられる高校生、犯罪現場を目撃する少女…。壱と晶水は、厄介な夢を解けるのか。青春ミステリー。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
幻冬舎文庫の一冊。夢見の力を持つという部分と、それをどうプロの作家として料理して一つの作品に仕上げてくるのかに興味を持って手に取った。
全体的にはやや重めのストーリー展開だったと思う。「夢」というものをどう捉えているかにもよるが、この作者さんは夢を過去の封じられた記憶の一片とする傾向が強いようだ。そのため、あらすじにあるような「青春ミステリー」と呼べるような要素は実はほとんどなく、作品全体としては夢見が「夢を見ることによって依頼者の過去を暴く」程度に収まってしまっていて個人的にはかなり物足りない。
というよりも、先に挙げたように依頼者の過去を暴くことがメインになっていてそこを「ミステリー」としているのかもしれないが、雰囲気としてはむしろ「サスペンス」に近い。
結局のところ、夢を見るということに対してあまり肯定的ではないのかな、と感じた。夢見というファンタジーな要素を描いている割には、描いている内容はとことんリアリズムな感じなので悪い意味でギャップが酷い。
内容としてもあらすじにあるような要素は「まぁ、そう言われればそうかも」という感じでだいぶ本編とは違う。
夢の中で見知らぬ女性に恋する大学生⇒「夢の中の見知らぬ女性を執拗に追いかける変態」
人を殺すよう命じられる高校生⇒「妊娠した母親を突き落す衝動にかられる高校生」
犯罪現場を目撃する少女⇒「なぜか誘拐現場を夢に見てしまう少女」
とまぁ、実際の本編を読んだ内容としてはこんな感じであらすじ詐欺っぽいw
青春要素はたぶん作中の主要人物による三角関係によるものなのだろうが、その三角関係が本筋である夢見や夢に一切関係ないのが構成としては痛手。「青春」と「ミステリー」なら納得するが、「青春ミステリー」とひとくくりにされると疑問がぬぐえない。
評価は、★★(2点 / 5点)。せめて三角関係の要素が最終的に夢見に絡んでくるならまだ良かったのだが……。
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