アルテミジアの嗜血礼賛

≪あらすじ≫
人間と、人間でないものが共存する現代。高校生の榛原浩一郎の家に居候している美少女・アルテミジアは、高貴なるグルメ吸血鬼“嗜血鬼”である。血のコンディションは心持ちでいかようにも変わる。学校でも有数の美人であるアルテミジアは、色んな「感情」の味を味わうために、日夜クラスメイト(ほぼ女の子)の悩みを解決しては牙にかける!その上、彼女は極上の血―「自分に心からの愛情を抱く者」の血を求め、浩一郎から愛されようと彼を誘惑してきて…!?
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
イラストレーターのkautoさんの絵がお気に入りで、『黙って私の騎士になれ!』と同様にそれだけの理由で購入w ただ、今回ばかりはさすがにちょっと後悔もしたがw
全体的なストーリーとしては、グルメな吸血鬼であるアルテミジアが、様々な伝承や言い伝え、口伝などから主人公・浩一郎に狙いを定めて最高の血を求めて奔走する……という名目のもと、いろいろと他の人にも牙を突き立てて血を吸っている、という感じ。
まずそもそもにしてこの時点でおかしい。普通ならラブコメを想像するあらすじだが、実際にはアルテミジアがあっちこっちにあの手この手を尽くして最高の状態で血を呑もうとしている。うん、アルテミジアは結局浩一郎の血が欲しいのか、そうじゃないのかはっきりしようかw
なんというか、浩一郎の血を真に求めているなら「私は貴方の血を極上の雫としていただくために、もう他の血は口に着けない」くらいの展開は欲しかったし、逆にグルメにいろいろな人の血を呑むのならそういう設定でいくべきだろう(例えば、主人公側全員が吸血鬼で、その血を極上の一滴とするために全力を尽くすグルメサークル、みたいな)。
本編も正直微妙。誤解を恐れず批判を恐れずに口にすれば、こんなにも読むのが苦痛なラノベも久しぶり。主人公である浩一郎にとって、もうアルテミジアに対する答えは決まり切っているのにそれを優柔不断にはぐらかしている。もう少し彼のポジションは物語的にも作品的にもハッキリさせるべきだったのではないか。妹のため、絶対にアルテミジアの思惑には乗れないのであれば、もっと敵対――とまではいわなくとも、邪見に扱うくらいはするべきなのに、そういうのがまるでないどころか、あれこれとやっている始末。
アルテミジアも、「浩一郎に好かれるために、浩一郎に嫌われることはしない」と言いながら、正直本編中の彼女はそんなことをしているようには見えなかった。
終盤でいきなり三角関係になったクルミも「え? ここで?」という感じ。三角関係をするならもっと前から普通にさせておくべきだったはずで、一冊として見た時の構成力も甘い。
作者としては「人間が美味しさを理解出来ないものを表現したい(意訳)」というあとがきもあったが、吸血されるヒロインたちはただエロそうに嬌声を挙げているだけで、理解も何もあったもんじゃない。あまりに文章力がない。
あとはイラスト目当てで買っておきながら、こんなことを言うのもなんだが挿絵が雑。表紙とカラーページはさすがに良かったけど、あとの挿絵はやっつけ感が……。まぁ、kautoさんのBlogによると「ピンチヒッター」だったらしいから時間がなかったのかもしれないが……。
評価は、☆(0.5点 / 5点)。アルテミジアによる吸血と感情が一致しない点を着いたのがギリギリの美点か。それがなかったら0点だったかもしれない。正直、それくらい酷い。
設定は好ましいのになぁ、感想を読んでるだけでゴリゴリ読書意欲を削られていくのは流石は同志Tの感想だと惚れ惚れ。
もう同志Tが小説書けばいいんじゃないかな(すっとぼけ)