遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠

≪あらすじ≫
永倉萌絵が転職した亀石発掘派遣事務所には、ひとりの天才がいた。西原無量、21歳。笑う鬼の顔に似た熱傷痕のある右手“鬼の手”を持ち、次々と国宝級の遺物を掘り当てる、若き発掘師だ。大学の発掘チームに請われ、萌絵を伴い奈良の上秦古墳へ赴いた無量は、緑色琥珀“蓬莱の海翡翠”を発見。これを機に幼なじみの文化庁職員・相良忍とも再会する。ところが時を同じくして、現場責任者だった三村教授が何者かに殺害され…。
(文庫本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
ミステリーというよりはサスペンスよりな気もする作品。作品としては単行本化・シリーズ化されている作品の文庫版(文庫化に際して改訂等もしている模様)。
総括を簡単にひと言で言えば「手堅い」かな。突飛なトリックや特殊な殺人が出てくるわけではないけれど、その分、一つ一つの要素を丁寧に手堅くしっかりと描いている、という印象だ。それこそ面白いかどうかは別として、二時間サスペンスドラマくらい作れそうなくらい。
幼馴染・忍との再会、自らを指名してきた雇主が殺されてから、彼らは一つ一つ事件への手がかり・足取りを地道に詰めて行く。そうした中で忍に浮かぶ疑念、再会するまでにあった幼馴染の過去と絡む謎の一族、そして敵は国内に留まらず……と少しずつ話の規模は広がっていくが、ストーリーそのものは地に足がついて一歩一歩進んでいく、という具合かな。
キャラクターに関しては賛否ある部分かもしれない。主人公の無量、ヒロインの萌絵は共に個性が強く我が強い。とてもではないが社会人とは思えない言動の目立つ序盤の二人をどれだけ寛容に観れるかどうかでキャラに関しては評価が決まるような気もする。
恋愛ネタに引っ張ったのはちょっと無理があったかな、と言う気もしたけどね(苦笑
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。手堅い一冊。奇抜なことを望まず、サスペンスを読みたいなら手に取ってみても(趣向の差があるので絶対とは言えないが)大損はないと思う。
Comment
Comment_form