三ツ星商事グルメ課のおいしい仕事

≪あらすじ≫
ある総合商社のお荷物部署・グループリソースメンテナンス課。毎夜、会社の経費で不要な食事を繰り返しているというウワサから、人はそこを「グルメ課」と呼ぶ。入社1年目の新米経理部員・山崎ひなの。彼女はグルメ課の浪費実態を暴くべく1ケ月限定での異動を命じられるが、案の定そこは社会人らしからぬ人々の巣窟だった…。ひなのは一刻も早く課を潰そうと食事会に潜入するのだが、そこには意外なミッションが隠されていて―。読めば読むほどに味の出る、おいしいお仕事ストーリー!
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
グループリソースメンテナンス課、通称「グルメ課」という架空の部署を舞台にした物語。
作品としては……何に分類すればいいんだろうねw ミステリと呼ぶには謎らしい謎はないしね。架空の課を舞台に「もしそんな課があったらどうなるか」というのを実際に書き起こしてみたという感じだから、ある意味ではファンタジー小説と呼べないこともないのかもしれない。
内容としては、社内でトラブったり困ったりしている社員を「勝手に」見つけて、「勝手に」食事に誘い出してお節介を働いて美味しい料理を食べながら問題を解決しよう、という感じ。
実際のお店や料理の描写があることが特徴と言えば特徴。架空の要素が強い作品ながら、それを現代舞台の作品として繋ぎとめている一因は間違いなく弧の部分だろう。そういう意味ではある種のグルメガイド本なのかもしれない。
全体的には良く纏まっている、と感じた。それぞれの話を短編オムニバスとしながらも、(すべてではないが)過去に手掛けた案件が最終的に廃課の危機を救う一因になったりと、そういった繋がりもしっかりと持たせているし、主人公で語り部の山崎ひなのも、社会人一年目らしい初々しさと青さ、拙い部分がありながらも新人らしい一生懸命さを出している。彼女なりに自分がした独断専行行動をしっかりと省みて反省している点も最終的にはプラスだろう。そういう部分がなければ、彼女の独断専行は間違いなく物語においてマイナスだった。
ただ良くも悪くも、グルメ課の人間が特徴も個性もあるのに影が薄いというのは感じた。あくまで悩んでいる人たちの悩みを解決したりその手助けをしたりするのであれば、解決する側の個性なんて無用ではあるんだけど、エンターテイメントとして見た時にはやはりインパクトに欠ける部分の一つかな、と。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。内容として、ある意味で日記やグルメ本的な部分があるのでそこは良くも悪くも人を選ぶ本だとは思う。あとは、前述のようにキャラの立ち方がちょっと弱いかな。それ以外は個人的に「ずば抜けて面白い」わけではないけど、「一冊の本というエンターテイメントとして良く纏まっている方だ」と思う。
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