土方美月の館内日誌 ~失せ物捜しは博物館で~

≪あらすじ≫
月曜日だけ探偵事務所を開くという『姫神郷土博物館』。大切なものを失ってしまった人は、不思議とこの博物館に集まるという。名前負けコンプレックスを持つ従業員・沖田総司もそんな奇妙な縁に引き寄せられた一人である。彼は就職詐欺に遭い、途方に暮れていたところを“名前だけ”で美人館主に拾われた。「すべてのものには来歴がある」が口癖の館主・土方美月は、単越した古物知識と新選組をこよなく愛する女性。総司は彼女と奇妙な事件を解くうちに、美月が捜し続けているものに気付いていく…。
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
なんというか表紙がラノベっぽ過ぎて敬遠していたメディアワークス文庫だけど、あらすじを読んで手に取ってみたくなってとうとうメディアワークス文庫にも手を出し始めてしまった(笑
さて、本作はあらすじにあるように新選組の有名隊士の名前を持つが故に、そのギャップで苦労してきた主人公が同じく有名隊士の名前を持つ女性と出会うことでいろいろと変わっていく、と言うストーリー。
全体的な感想としては、ゴチャゴチャしてて中途半端、だった。
まず名前に関して。これは私は良かったと思っている。あくまで名前を借りているだけ、というのが良い。これで新撰組そのまんまで描いていてはつまらない。そういう意味では、名前のモチーフになった隊士の外見的(ないし内面的)イメージを程よく残しつつ、それぞれのキャラクターが別個のキャラクターとして成り立っている。
ただし、それ以外の部分がちょっとお粗末に感じた。
ストーリーに関して言えば、結局一冊を通して何がしたかったのかが見えなかった。序盤の神隠しのくだりも、最後に伏線として回収したと言えなくもないが、かといってあのエピソードがないといけなかったかというとそんな感じは全くしなかった。動物園でのエピソードは良く仕上がっていたが、反面その前後の序盤と終盤の造り込みが甘い。
これは特にキャラクター面とも密接に関わることだが、場面場面でキャラクターが別人のような立ち振る舞いをしている点はいかがなものだろうか。土方美月に至っては、多重人格だったと最後に言われても納得出来るほど。それは作中でも触れられてはいるが、一冊の本として見た時にもう少しまとまりがないとキャラクターとして全くつかみどころがないように思えてならなかった。というよりも、逆に言うと美月がここまでの性格にしないと進まないストーリーやネタだったかと言えばそうじゃなかったのが一番の痛手だろう。
主人公の沖田総司は、一般的な主人公像だったので特に可もなく不可もなくだったのだが、一点だけ「お化け嫌い」の設定が本当に必要だったかどうかは疑わしい。序盤で散々そのことに触れながらそのことがその後のストーリーで十分に生かされたかと言えばそれは間違いなくNOだった。
こういうところ含めて全体的に造り込みが甘く中途半端な印象を受けた。
評価は、★☆(1.5点 / 5点)。ミステリと呼ぶには謎らしい謎はなく、日常と呼ぶにはあまりに突飛で、ラブコメと呼ぶにはラブもコメもなく、結局じゃあこの本で何を示したかったのか、何がしたかったのかが分からない一冊だった。
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