開門銃の外交官と、竜の国の大使館

≪あらすじ≫
召喚機兵を呼び出す力“星の輝き”を持たずに生まれた少年ユーヤ。彼は「選ばれなかった」自身の運命を悲観することなく、相棒のミーシャと共に「選ばれた」人々を守る警護官となる。ある日、彼らは人間族の中では稀な“星の輝き”を持つ者で、巨大な開門銃を携える外交官の少女シズナの護衛のため、竜神族の国ドラコニドへ向かうことに。そこでユーヤ達は種族間の対立、陰謀に巻き込まれていく―。銃と召喚、そして外交の力が交錯するバトル・ファンタジー!!
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
ジャケ買い(表紙買い)したファミ通文庫のライトノベルです。表紙の女の子たちが可愛くて……ではなく、表紙で女の子たちが持つ銃のカッコよさに目を奪われて買いました(爆)。まぁ、そんなに出番はなかったんだけどねっwww
さて、本編ではあるが、まずはやはり異世界であること、というのが一つの特徴か。その中でバトルと外交という二つの軸を持つ作品になっている。
異世界が舞台なのでいちいち設定の説明が煩わしいかと思いきやあまりそんなことはなかった。正直、「文才がある」という感じは(失礼ながら)受けなかったけれど、「読み手を考えて文章を書ける」とは思った。個人的には文才があっても読みにくい文章を書く作家さんよりも、ずっと好感が持てる。
また銃撃戦、召喚戦、外交、異世界と多数の要素を上手くバランスよく配置しているとも思った。この辺りの「要素」の使い方は上手い方だな、と。
ただバランスよく描いている分だけ、全体的にどれもこれも中途半端な印象を受けてしまった。
十歩譲れば、描写数が少ないもののバトルシーンは総合的に良質なものだと思えた。主人公の突然の(ご都合主義的な)覚醒を是とするか非とするかで評価は分かれそうだが、個人的には「是」かな。主人公・ユーヤが上手い銃撃と重装甲ハイパワー型の戦い方をする点が、とても「好み」だったのも理由の一つだけどw
召喚<創神兵>の扱いも良い。機械的で破壊されても一定時間で修復される存在なので、敵として出した時は容赦なく殺せる(破壊出来る)存在になっていて、そういった存在を破壊することで敵兵を殺すという、本来バトルに不可避な要素を上手く回避していると思う。
また終盤でのシズナの召喚<創神兵>の圧倒さもその名に違わぬ性能だって点も良かった。
ただ作品の「両輪」のもう一つである外交面が結構弱かった気がする。救出すべき相手の解放だけでなく、敵国の奴隷制度に対する干渉までしてしまったのはたぶん完全に失敗だったはずだ。バルトロメオ救出のための外交のはずが、奴隷制度緩和のための要件がバルトロメオ解放に必要な交渉のカードではなくついでとして使われてしまったことを考えると、この要素は不要だったと言わざるを得ない。
他にも「弱い」と感じてしまうのは、主人公の一人称で話が進んでしまった点だろう。外交は行ってみれば、もう一つの戦闘であり戦争だったはずなのだが、それに対して無知な主人公だったので描写に対して厚みがない(逆に言えば戦闘シーンがそこそこ良質だったのは、主人公が戦闘専門だったせいでもある)。
作品として考えた時に、地の文は主人公よりも外交官シズナの方が良かったのでは? あるいは三人称を変則的に使うなどの方が良かった気がする。
この辺、アイディアは良いがアイディアを生かし切れていない感じが強い。
キャラクター的にはどのキャラもそこそこ。ただヒロインの一人であるミーシャは、ハッキリ言えば悪かった。悪いというと語弊があるんだけど、キャラクターとしてあまりに定まってなかった。クールな感じかと思えば、偉い人には言動が悪くなっているというヤンキーで、そう思えばめちゃくちゃ偉い外交官シズナにはそんな感じで振る舞わず、途端に常識のない無礼講さをして……みたいな(苦笑 もう少し、キャラクターとしてはしっかりと定めておくべきだっただろう。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。まずまずの及第点。マイナス面は、前述のように軸の一つだった外交面の弱さを中心に中途半端さがあることと、ヒロイン・ミーシャの描写の拙さが大きい。
ラノベとしては読みやすい部類だと思うし、主人公が突発的に覚醒する感じとかが好きな人なら大丈夫かな。
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