判決はCMのあとで ストロベリー・マーキュリー殺人事件

≪あらすじ≫
裁判中継が娯楽となり、そこから誕生した裁判アイドル(裁ドル)グループCSB法廷8も、今や人気絶頂。そんな中、人気バンドが関わる殺人事件の公判が始まろうとしていた。ゲストとしてCSBも参加する注目の裁判に、裁判員として参加することになった会社員・生野悠太は、憧れの裁ドル・川辺真帆に声をかけられ浮かれるが、審議の行方にはどこか違和感を覚えるのだった…。前代未聞、謎と恋の法廷青春ミステリ。
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
裁判員制度がこの国でもスタートしているが、それを題材にした架空の未来をミステリーで描いた物語。
裁判員制度を通してより国民が法に興味を持つように、裁判がテレビで中継されるようになり、完全にエンターテイメントと化した世界という設定。AKB48のパクリの裁判アイドルなんてのも出てきたり何だったりと、世界観の造り方は別作品『朧月市役所~』同様にこの作者さんは上手い。
ただ、裁判員制度を題材にして今よりも未来を描いている割に、テレビ中継だとか、エンターテイメント化したとはいえ倫理観を常に問われ続けてネットの発達で益々視聴者の目は肥えているのに視聴率重視過ぎるプロデューサーたちの振る舞いというのは、極めて前時代的で旧時代的。その辺がやや未来と過去をごっちゃにしているというか、中途半端な感じで世界観が凄く曖昧。
ストーリーもそんな感じ。裁判員制度について、ミステリー、現恋人と今を時めくアイドルとの三角関係という恋愛とやろうとしていること、やりたいことがあまりに多い上にそれぞれの「属性」とでも言えばいいのか、シリアスや真面目さの強いものからそうじゃないものまであるから、とにかゴッチャ。
もう少しやりたいことに的を絞っておいた方が良かったのではないか、と素人ながらに思ってしまった。裁判員制度についても大学時代にちょっと学んだ程度の私が読んでも、良くも悪くも踏み込みが浅い感じで(ライトな感じにして読みやすくしたかったならアリだと思うが)、ミステリーの謎解きも恋愛要素もなんかおまけ要素が強くて一つの要素として確立はされていなかった感じがする。
評価は、★★★(3点 / 5点)。もう少し描きたいものを絞ってピンポイントに描かないと、作品全体の中途半端感はぬぐえない。個人的には恋愛要素で通した方がまだ面白かった気がする。
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