腕貫探偵、残業中

≪あらすじ≫
「市民サーヴィス臨時出張所」で、市民の相談に乗る腕貫着用の男。明晰な推理力を持つ彼のもとへは、業務時間外も不可思議な出来事が持ち込まれる。レストランに押し入った強盗の本当の目的は?撮った覚えのない、想い人とのツーショット写真が見つかった?女教師が生前に引き出した五千万円の行方は?“腕貫男”のグルメなプライベートにも迫る連作ミステリ6編。 (単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
腕貫探偵シリーズの第二巻。「残業中」というタイトル通り、第一巻での「仕事としての謎解き」からプライベートにおける「私事としての謎解き」となっているのが違いだが、ぶっちゃけ違いらしい違いはないw ただ、第一巻で「業務」っぽくしにくい雰囲気や事件の謎を解いているだけの違いだ。
全体的には一巻と大差はないが一巻よりもやや救いがないというか、ちょっと終わり方としてモヤモヤするような終わり方をする短編が多いのは気になった。
内容としては男女のいざこざ(主に恋愛)の話すが多いほか、綿貫さんにもロマンスが? みたいな感じを含めてこの巻のテーマは恋愛だったり、男女間の問題や価値観の違いだったのかな、と思う。
以下、前回同様短編ごとの感想。
『体験の後』
お役所仕事、というエピソード。正しいことが幸せとは限らない、という典型的なエピソードだった。腕貫の男からすると最も合理性がある推理を披露したけれどそれで幸せになる人はいなくて、犯罪を隠蔽するような方法の方がみんな幸せになれたかもしれない、という話。
だから終わり方がちょっとモヤモヤする。そこに一理は確かにあるけれど、それを認めてしまうと法治国家の意味がなくなっちゃうしね。
『雪の中、ひとりとふたり』
男と女と殺人事件、のエピソード。なんというか女って怖いね、というw 心情に入り込むというよりは、単純にミステリーとして「どうして?」という謎を追うのが楽しめるエピソードだったと思う。
『夢の通い路』
全六篇の中ではスッキリしている……というと、あくまで個人的な好みの問題なんだけど、オチ、エピローグまで含めて良く纏まっていた短編。写真の謎はなかなかに面白く、その裏側にある真相はやや残酷ではあるけれど、確かに思春期のその頃に「そんなこと」があると知ればそれくらいはしてしまうかもしれない、という正論とは程遠いはずなのに奇妙な納得感があった。
『青い空が落ちる』
結局一番イカれていたのは教師だった、というエピソード。感情移入するエピソードではないと思うのでそれが当然だとは思うのだけど、なんというかそれに五千万も使ってしまう辺り、この老教師こそが一番くるっていたんだろうな、と。そんなに観測者でいたいなら教師じゃなく教授でも目指せばよかったのに、と変な事を思ってしまったw
というか、その死にもう少し謎が欲しかったかも。
『流血ロミオ』
惚れた女は最低だった、というエピソード。男が恋愛に対して初心過ぎるのか、男心と女心は違い過ぎるのか、あるいは男の想いを知りながらそれを逆手に取る女が悪女なのか、という話。
でもこれ、絶対隣家の男の子、自白するよな(苦笑 一年も黙ってるとか性格考えたら無理そうだけどw もちろんストーリー的には、というかミステリーとしてはオチらしいオチなんだろうけど、スッキリするかというと微妙な話。
『人生、いろいろ』
何事も安易な行動は良くない、というエピソード。二股かけていた男に復讐しようと、男の立てた元カノ殺害計画を利用して男の祖母から三千万を盗むというのは、まぁ強盗の話が出て来たところで薄々勘付いたけど、それがまさか偽札だったとはね。
まぁ、どっちもどっちなんだけどさ。結局金に走る女二人と、なんか因果応報だなぁみたいな呑気な男ももともとは優柔不断さと二股が原因だったわけだし。
このエピソードがこの巻の中ではスッキリしている終わり方、というのが何とも言えない。
評価は、★★★★(4点 / 5点)。前作と比べるとキャラクターが立っている部分ではプラスだったが、一つ一つのエピソードがもやもやした感じの終わり方なのは大きなマイナス点だと思う。
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