[再]新機動戦記ガンダムW 第48話
- ジャンル:[アニメ・コミック]
- テーマ:[新機動戦記ガンダムW]
『混迷への出撃』
≪あらすじ≫
リーブラのモビルドール制御室で会ったカトルとドロシー。ドロシーとの戦いの中、彼女に真意と深い悲しみを知ったカトルは、あえて彼女の剣を受ける。
デュオは、マグアナック隊や彼らに協力するリーオー部隊とともにモビルドールを倒しながら、リーブラ地球落下を阻止すべく行動を開始。
アルトロンガンダムの五飛は、トールギス2号機を駆るトレーズとの戦いを繰り広げていた。壮絶な一騎打ちが繰り広げられる中、五飛の放った一撃がトレーズを貫く。五飛を理解者と認識するトレーズは、ガンダムパイロットたちにすべてを託し、みずから舞台を降りることを選んだのだった。
トレーズの死を受けて、レディ・アンは世界国家軍の敗北宣言を全宇宙に告げる。ここに、戦争は終結したかに見えたが、ヒイロとゼクスの戦いは、これから始まろうとしていた。
そして、一度は落ち着きを見せたリーブラも再び、地球へと落下しつつあった。
(公式HP TVSeries Story 第48話より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
さて、いろいろと見どころの多い48話。
カトルの「優しさの捨てた人類は動物以下」「優しさこそが大切な事」というのは、ガンダムシリーズの中でもなかなか他に例を見ない形かもしれないね。
どちらかというと戦争や争いを軸としているため、「希望」「未来」「可能性」なんてのが前面に出てくることが多いが、その中で「優しさ」「他人への思いやり」を人類にとって必要なものなのだと言うカトル、あるいは最終話のヒイロなどで表現する辺りが『W』なのだ。隣人愛、という意味では近年の富野監督のニュータイプ論に近い部分はもしかしたらあるのかもしれないけど。
以前コメントにいただいたように、ホワイトファングと地球国家軍の戦死者の数があまり大差ないことは一見すると不思議なのだろう。ただ、実際のところどうなのかというとあまりそうでもないのかもしれない。
これほど互角な事に推論を立てると、三つほど推察することが出来る。
一つは地球国家軍の諜報部隊が正確な数字を把握し切れていない可能性。これは単純。当然自軍の方が戦死者の数は正確に把握できるが、敵軍の方は推察になるだろうから大雑把になる。これでホワイトファングの戦死者数が多めに見積もられているのではないか、ということ。
二つ目は、モビルドールの戦闘力が意図的に落とされている可能性。そもそも、使用している素材がチタニュウム合金と量産型とはいえガンダニュウム合金という決定的な違いがある宇宙用リーオーとビルゴIIで果たしてどれだけ互角の戦いが出来るのかというとかなり疑問のはずだ。地上では旧型のビルゴに地上用リーオーは文字通り手も足も出なかったではないか。
しかし、戦線は拮抗していた。リーオーの遊撃部隊はリーブラに取りつけずにはいたがビルゴ部隊も敵本陣であるMO-IIに迫れてはいない。
つまるところ、ビルゴは意図的にプログラムによって性能が落とされており、リーオーでも互角の戦いが出来たのではないか。故に、リーオー=地球国家軍の戦死者数が当初の見立てよりも予想以上に少なくて個の数字になっているのではないか。ちなみに漫画版だとこの設定になっている。
三つ目は、ホワイトファング側の戦死者数は輸送艦を多く落とされたせいではないかという可能性。いくらビルゴがモビルドールで無人機だったとしても、戦場までは輸送しなければならない。母艦であるリーブラから直接出撃させては、会戦の宙域に辿り着くまでに推進剤を消耗してしまって性能が発揮出来なくなる。モビルドールは人的資源は不要だが、それでもエネルギーや推進剤といった動力関係の部分は他のモビルスーツと同じように必要なのだから、当然と言えば当然だ。
それ故にモビルドールも輸送部隊が多数存在していた。これには裏付けもあり、ピースミリオン攻撃隊は実際に輸送部隊が存在し、ヒイロは「第202ピースミリオン攻撃隊」を装ってリーブラに侵入したわけだ。当然、同規模以上の部隊数がこの決戦には動員されているはずだ。
そしてモビルスーツは1人1機だが、輸送艇の場合は最低でも2人以上、あるいはその数倍から数十倍の人数で運用されていると見るのが普通だ。つまり、一隻落ちた際の被害も大きい。
ただ、それは地球国家軍も同じ条件。ただ、戦い方を熟知しているのか地球国家軍の方は輸送艦を下げた可能性が高く、逆にホワイトファング側は前線に残り続けていて落とされたのではないか(MO-IIは負傷したリーオーの収容に留まっている、という報告が劇中であったように損傷した機体は出撃した輸送艦ではなくMO-IIへ向かっている)。
まぁ、とりあえずこんな感じだろうか。
最後は五飛とトレーズ。結局、最後のトレーズの突撃は五飛と自分の命を天秤にかけたのだと思っている。五飛がこの突撃に反応しきれないならたぶんあのままトレーズは五飛のアルトロンにビームサーベルを突き立てただろう。ただ五飛が反応すれば潔くその一撃をその身に受ける覚悟はしていたと思う。
思えばあの瞬間、トレーズはほとんど初めて攻めに転じたといえないだろうか。生身の戦いもそうだったが、彼は常に五飛の先手に対して後の先を取るかのような行動が多かった。モビルスーツ戦でも五飛のアルトロンが繰り出す攻撃を回避し、シールドで受け止めたアクションの後に反撃に転じるシーンが極めて多かった気がする。
そうした中でトレーズ自らの攻め。それは同時に彼の「敗者になりたい」という願望だったのかもしれない。OZの総帥として、国家元首として常に相手の出方を見て、それに見事に対応する高い能力を彼は常に持っていたが、それは地位に縛られたトレーズ・クシュリナーダという存在がしたことであり、「トレーズ」という個人がしたいと願っていたことではなかったのではないか。
ある意味でばくちだったと思うんだよね。トレーズにとっては、五飛に勝つことによって国家元首としての――いや、まぁトレーズはヒイロのようにどことなく死に場所を求めているようでもあったが――責務を果たそうとしただろうし、五飛に負けることで個人として望んだ「敗者」にようやくなれる、と。
それを「勝ち逃げ」と評してしまう五飛は、らしいといえばらしいし、まだまだといえばまだまだなのかもしれない。
NoTitle
仰る通り、トレーズ自身は、もし五飛が自分の突撃に反応できないようなら、そのまま倒すつもりでいました。
しかし、五飛は自分に介錯をさせたと思い込んでしまったんですね。
騎士道のトレーズに対して、五飛は武士道寄りの思想だったこと。
なにより直前に戦争の死者全員を背負うトレーズの器の大きさに圧倒され、正々堂々の勝利だったにもかかわらず、五飛は勝手に負けてしまったのだと。
その事が、後の五飛の行動に影響を与えているんですね。
五飛の中では、トレーズとの決着はついていなかった。
だからこそ今度は自分がトレーズの代役をすることで「答え」を出そうとしていたようです。