妄想女刑事

≪あらすじ≫
警視庁捜査一課所属、自称酒豪、宮藤希美。彼女には奇癖があった。一度スイッチが入ると、ところかまわず妄想の世界に没入してしまうのだ。もちろん、捜査中とて例外ではない。だが、これが謎のバーテンダー・御園生独にかかると、なぜか辻褄のあった推理に翻訳され…?電車の網棚の置き去りにされた人間の手首の謎、ナース服を着た外国人男性の死体の発見…不可解な事件も、モーソー推理でズバッと解決(するかも?)!本格ミステリの名手が、本気で贈る包腹絶倒ミステリ!
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
突飛な妄想で事件を解決へと導く女刑事のコミカルなライトミステリー本。
内容としてはやや厳しいなぁ、というのが読んでいてずっと思っていたことだった。なんというか、主人公である宮藤希美のキャラに一貫性がないんだよね。「刑事を目指していた」「異動届を出してまで刑事課を希望した」と冒頭のプロローグで描きながら次の展開では刑事への意気込みや心構えは誰がどう見ても「本当に目指してたの?」と思うほど中途半端で足りないし、肝心要の「妄想」も妄想っていうかただの迷夢(迷走)って感じの集中力が足りないだけじゃん、と。
見た目はそこそこらしいけど、彼女の内面は本当にキャラクターとしての魅力に欠いていて、刑事としての意気込みもなくて、推理すら謎のバーテンダー頼み(もっとも、それすらも希美の妄想というオチだが)でと……脇を固めるサブキャラたちの方がよほど魅力的なのが難点かな。
前述のようにミステリーというほど謎解きに本格的ではない。謎を解くタイミングで必ず謎のバーテンダー・御園生独が出てくるっていうのも、結局希美が普段ダメダメだけど「妄想」で謎を解けてしまう時があるっていうアドバンテージを奪ってしまっている感じがしている。
いや、確かにその存在が希美と直結しないわけではないんだけど、かと言ってじゃあそれが希美が推理(妄想)して謎を解いたことになるのかっていうと結構微妙だと思う。だってそこに希美の意思が希薄だから。推理でも妄想でもしっかりと「こうだ!」とか「こうかもしれない」とかそういうのがあるわけじゃなく、都合よく出てきて都合よくアドバイスして、おまけにその存在までも都合が良いというのではね。
せめて御園生独が「希美の妄想の存在」じゃなくてもっと意味深で謎のある存在なら良かったかもしれないが……。
その辺含めて、あらすじにあるように「ズバッと解決(するかも?)」なんだよね。まあ、全部を全部妄想で必ず解決じゃなくても良いけど、半分くらいはだれにも(それこそ御園生独にも)頼らず本当にその妄想でしっかり解いてしまうような感じが欲しい。
そう考えると、彼女視点で物語が作られていることは失敗だったように思う。『Mr.キュリー』シリーズのように希美の存在をジョーカーとして、彼女を関わらせて彼女に妄想させるとその妄想は不思議と事件解決に直結して行く、みたいな使い方の方が良かったかな。
評価は、★☆(1.5点 / 5点)。一応続編が作られる程度の人気は獲得したみたいだが、全体的にイマイチな感じを最後まで脱せなかったと思う。次回作の「迷走女刑事」の方がタイトル的には最適だったかな、とw その分だけ次回作は少し改善されていることに期待。
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