櫻子さんの足下には死体が埋まっている 白から始まる秘密
- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[櫻子さんの足下には死体が埋まっている]

≪あらすじ≫
北海道・旭川。あの夏、僕・正太郎は、櫻子さんに出会った。白いお屋敷に住む、美しいお嬢様。それが初対面の印象だった。また会えたら、なんて淡い期待を抱いていたけど、お屋敷の前で、僕は彼女が血まみれの何かを持っているのを見てしまう。しかも近所のおばあちゃんが行方不明になり…。(「土を掘る女性」)櫻子さんと正太郎が挑む最初の事件。そしてその記憶が、正太郎に大切なことを思い出させる。大人気ミステリ!
(単行本帯表記より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
人気シリーズの第六巻。中編を二本という珍しい構成で、前篇が過去編、後篇が都市伝説編という形。
まず過去編。過去ということでいつも以上に正太郎がウザイw ただ、そこはまだ櫻子を知らない正太郎少年という形になっていて、そこには納得が出来る部分もあったと思う。
正直なことを忌憚なく書かせてもらえるなら、そんなに内容のあったと思えるようなものではなかったというのが本音だ。というのも、この程度の出会いのエピソードがあっただろうことはたぶん読者なら誰でも思ったことじゃないだろうか。
もちろん、それが悪いとは思ってはいない。読者が予想した通りの結末を用意出来るのもクリエイティブな仕事をする人として決して「普通」に出来ることではないことだと思う。むしろ、読者の予想を裏切ろうとあれこれと画策する人の方が多そうなものだ。
ただ、ここまで「普通」だとわざわざ描く必要があったのかな、とは思ってしまう。もちろん、正太郎少年にとって複雑な家庭事情の上に成り立つ人間関係を見つめ直し、祖父母の存在の大きさと家族のきずなを確かめる意味のあったエピソードではあったと思うが……。
次が都市伝説編。前巻からの続きとしてはこちらの方が意味が大きい。正太郎が櫻子だと思っていたphantomの正体はある意味予想通りで、展開としてはいかにも主人公たちのライバル犯罪者的言動ではあるが、そこはオーソドックスな展開ながら悪くないと思った。
特に中身としてはなかなか犯罪者たちに鉄槌を振りかざすことが難しかっただけに、少しでもそれに報いる証拠があったということは読者の中でもその後の彼らの顛末をいろいろと良い方向へ想像出来る材料が揃えられていたと思う。
何より、正太郎少年が櫻子の亡き弟・惣太郎の代わりであることを受け入れ自ら望んだ点は大きく評価していいところではないだろうか。
どうしてもこういう場合、「自分は惣太郎じゃない」となりがちだけど、そこで櫻子たちのことを思って、彼女の倫理の歯止めになるならば喜んで代わりになろうとする正太郎の在り方というのは、このシリーズで初めて彼を主人公の一人として尊敬出来た。
今後の展開でそればかりではもちろん困ってしまうし、その「切り札」を使いまくって下手に邪魔をするようならマイナス要因になってしまうとは思うのでその辺のバランス感覚は今まで以上に著者の太田さんには求められてしまうことにはなるとは思うけどね。
一つ苦言を呈させていただけるなら、全体的に「骨」に纏わるミステリーが少ないのが難点だと思った。まぁタイトル通り「死体が埋まっている」エピソードはあったのだからそういう意味では良かったとも思うが、櫻子さんの趣向を考えれば以前の同シリーズ記事でも書いたようにもっと「骨」は事件にも絡めて行かないと、読んだという手ごたえというか読みごたえに欠く気がした。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。正太郎の決意と覚悟を評価してこの点数で。内容的には先に挙げたようにミステリーとしてはもっと骨を搦めて頑張ってほしいところ。
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