掟上今日子の備忘録

≪あらすじ≫
掟上今日子―またの名を、忘却探偵。すべてを一日で忘れる彼女は、事件を(ほぼ)即日解決!あらゆる事件に巻き込まれ、常に犯人として疑われてしまう不遇の青年・隠館厄介は今日も叫ぶ。「探偵を呼ばせてください―!!」スピーディーな展開と、忘却の儚さ。果たして今日子さんは、事件の概要を忘れる前に解決できるのか?「化物語」「めだかボックス」の西尾維新がおくる新シリーズは探偵物語!
(単行本帯表記より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『刀語』『物語シリーズ』『めだかボックス』と近年のアニメファンならみんな大好き(?)西尾維新さんの最新作。といっても、実は私、西尾維新さんの作品の原作は一度も読んだことはない。『刀語』も『物語シリーズ』もアニメでは観たけど、原作は手に取っていない。そんな私が――通勤の途中の片手間で本を読む私が――持ち運びに不便な文庫本ではなく単行本のこの作品に手を伸ばしたのはきっと西尾維新さんに期待していたからだろう。
作品はライトミステリー。ただ、謎を解くというよりは解く過程を楽しむという感じで、探偵小説、ドラマなら『古畑任三郎』みたいな感じがあるかな。謎で魅せるのではなくキャラで魅せるという具合。
総評としては他作品がどうなのか知らないので比較は出来ないが、良く纏まっていると思う。もちろん、手放しで賞賛できるかといえば、まぁそれは個々人の感性の違いもあるので一概には出来ないところではあるのだけど、ミステリーとしての謎、トリック、キャラクターのセリフ回し、地の文となる主演にして脇役の厄介の言葉遣いなど全体的に高水準に纏まっているという感じ。
とはいってもミステリーとして本格的なトリックを使っている、というわけではない。トリック自体は非常にシンプルというか、逆に言えばちょっとした知識や知恵があれば出来ることを上手く発想を利用してやっている小さな謎が多いかな。
トリックとしては、最後の「さよなら今日子さん」のトリックが一番好きかな。トリックと呼べるようなものではないのだけど、文豪というか大衆作家が遺した想い、みたいなのが綺麗に纏められていたと思う。
キャラクターに関しては、まだ手探りながらという感じだったのは否めないかな。特に厄介に関してはそう思う。地の文と実際に口に出た際のセリフのギャップというのを私は強く感じてしまった。というよりも、地の文の口調だと中性的で童顔で背が低くてオドオドしているような感じのキャラに見えるんだけど、実際は長身の巨人なんだよね(苦笑 まぁ、外見と内面にギャップがあるなんてのは別に不思議なことではないにせよ、外見と内面と言葉遣いの三点でギャップが大きいのはちょっとな、と。
あと、「厄介」という名前が体を示しているように厄介ごとに巻き込まれて、そのたびに犯人扱いされて、だからそんな自分の濡れ衣を晴らすために多数の探偵との人脈(連絡先を知っていて)があって、というのは面白いと思うのだが、実際に彼が犯人扱いされてしまった事案って、結局最初の一つだけだったでしょ?
残りの短編は知り合いからの頼み事だけ。結局、厄介という青年が犯人扱いされてしまってその濡れ衣を晴らすために探偵を呼ぶという、このシリーズ・作品において根本的な世界設定を最初の導入で示しただけでそのほかでは一切活用されなかった、というのはちょっと書下ろしの小説の構成としてはミスだったんじゃないかな、と。
最初の導入となったエピソードと、最後の厄介が今日子さんを「裏切る」エピソードは必要不可欠だったとしても、その間にあったエピソードはもう少し工夫出来なかったのだろうか、と思ってしまう。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。厄介の内面と台詞のギャップに対して私は最後まで違和感がぬぐえなかったこと、厄介のキャラ設定が結局活かせていないことが主なマイナスポイント。トリックと言うか、謎そのものや、忘却探偵である掟上今日子というキャラクター性は良かったと思う。
- at 10:37
- [特集:忘却探偵(掟上今日子)シリーズ]
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諸葛鳳雛
おもしろい本があったのでお知らせします。
ダン・ブラウン氏の書いた「ロスト・シンボル」です。
またラングドン教授が活躍する話です。
これも上・中・下巻に分かれています。
「ダ・ヴィンチ・コード」の後の話ですね。
ただ最後のほうとか説明が冗長だったかなと思いましたが。
ご一読しては如何でしょう?