JC科学捜査官 雛菊こまりと "ひとりかくれんぼ"殺人事件

≪あらすじ≫
神戸海園大学構内で女性講師の変死体が発見された。傍らに転がる人形を不審に思った兵庫県警の百地は、科学捜査研究所に鑑定を要請する。一方、14歳にして博士号をもつ雛菊こまりが、人材交流のため、アメリカFBI科捜研の特別研修員として、祖父が勤める兵庫県警科捜研に派遣されてきていた―。女子中学生(JC)科学捜査官が最新の科学捜査で不可解なオカルト事件の謎に迫る!
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『このミス』大賞の関連作品の一つ。
概要はあらすじの通り、天才といわれる主人公の女子中学生・雛菊こまりが、祖父のいる兵庫の科捜研に研修員として派遣されて、そこで起きた事件の謎を追う、というもの。
一冊をかけて一つの事件をじっくりと追っているものだが、テンポが良い。
内容に関しては、エピローグで語ったように偶発的なものが連続して続いている。そこは普通の作品なら「ご都合主義」になってしまうところだが、そこはオカルト事件を題材にし、さらに科学者が「(そういう偶然がなければ事件は解決しなかったかもしれない。それを考えれば)オカルトがないとは思えない」と言わしめたからこそ、そう感じさせなかったのは凄い。これは題材選びの妙と言っていいだろう。
オカルト的な事件を科学の視点と手法で解決し、それがオカルトなんて一切かかわっていない人為的な殺人事件でしかなかったのだけど、それを最後にはやっぱりオカルト的・超自然現象的な可能性に帰結させることによって、偶発的に揃っていた証拠の物語上の不自然さを消している。
キャラクター面で言ってもいい塩梅でバランスが良い。同僚となる面々は、祖父を始め個々の個性がしっかりと立っている。直属の上司となる流王というキャラもいたが、嫌味っぽく思わせておいてすぐにこまりの覚悟と決意、優秀さから年齢や性別ではなく実績で彼女を評価し認めている点で、すぐにそんなに悪くないキャラポジションにいる。
強いて言えば、その逆にこまりを年齢や風貌だけで評価している新米刑事・赤星がややウザったくもあるものの、そこは味と呼べる範囲内だろう。
あとはこまりの経験した過去の体験がちょっと重過ぎるかな、とは思った。正直、シリーズとして続くならともかくそうでないならなくても問題はなかったかな、と。
それにしても、この作者さんの本は初めて読んだので他の作品がどうなのか知らないが、とにかくよく調べてある。調べてあることが真実なのかどうなのかは、私にはわからないがとにかく専門用語が多い。正直、科学用語・専門用語があまりに多いのでもう少し添削で削除出来るところは削除した方が、文庫本としては読みやすいのではないかとも思うが、まぁそこは判断が難しいところか。
評価は、★★★★★(5点 / 5点)。非常に良く纏まっている一冊。科捜研を題材にしたテレビドラマが今も続いておりミステリーにおける一分野になっているため、そういったドラマや科学的な展開を好み人なら楽しく読めるだろうし、そうでなくともライトミステリーを楽しみたい人にも勧められると思う。シリーズとなって次回作が出るなら期待したい。
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