化学探偵Mr.キュリー2

≪あらすじ≫
鉄をも溶かす《炎の魔法》、密室に現れる人魂、過酸化水素水を用いた爆破予告、青酸カリによる毒殺、そしてコンプライアンス違反を訴える大学での内部告発など、今日もMr.キュリーこと沖野春彦准教授を頼る事件が盛りだくさん。庶務課の七瀬舞衣に引っ張られ、嫌々解決に乗り出す沖野が化学的に導き出した結論は……!? 大人気シリーズ第二弾が登場!
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
Mr.キュリーの第二巻。第一巻既読。短編オムニバス、という感じ。最近はライトミステリーだと★二つ評価くらいのものばかり読んでいたせいなのか、久々に面白かったw
全体的なテイストは第一巻のまま、科学的(化学的)側面からの物語・謎の切り込みによるライトミステリーと言ったところで変わらないが、完成度が桁違いに上がっているように感じた
とりわけ、特に改善度合いが優秀なのはキャラクターだろう。主人公で探偵役でもある沖野は一巻の時よりも「巻き込まれる意味」が良くなっていたように思うし、彼が物語の前面に出ていない点も良かったところだ。あくまで沖野を探偵役としており、それぞれの当事者と相談を持ちかけられるヒロイン・舞衣を経て最終的に沖野のところに辿り着いてサクサクっと謎を解いてしまう。
そのテンポの良さと早さが良い。沖野が下手に物語の冒頭から関わるよりもずっと読みやすく、そして面白い。
また前作で私がこれ以上なくこき下ろしたヒロインの舞衣も性格が大幅にまともになっている。あまりに性格が変わってしまうとそれはそれで問題ではあるものの、彼女のヒロインとして意義のある「好奇心」を残したまま、大卒事務員一年目とは思えないほどの無礼で礼儀知らずだったところはすっかり影を潜め、大卒一年目とはいえ社会人というポジションをしっかりと理解していた。
舞衣がそこをしっかり抑えるからこそ、相談事を持ちかけてくる多くの大学生(学生)たちと差別化が出来ている。社会人と学生のスタンスの違いというか、わずか数年(下手をすれば一年の差だったり、相手が大学院生だと相手の方が年上だったりするが)でもそこは学生なのか社会人なのか、それによって思考や言動が異なるからこそ舞衣が大学の事務員であるという意味があると思う。
そこが消えて居た前作は、ぶっちゃけた話、舞衣は別に事務員じゃなくても良かったわけだ。大学の四年生でも大学院生でも物語は成り立ってしまっていた。
それに比べると今作は舞衣の立ち振る舞い含めて、「学生」との違いや差別化が出来ているので彼女が大学の事務員である意味がちゃんとあった。
あとは何気に一巻のキャラを出したり、存在を匂わせたりするやり方は巧いなと思った。シリーズ作品だと過去作品で出したキャラを出すのは誰でもできるが、そのバランスを間違えると「内輪」で終わったり、せっかく名前を出しても無意味だったりと難しいところもあるが、そこは絶妙だったと思う。
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。長編というよりライトミステリーの短編オムニバスとしてだが、完成度が高い。一巻を読んでいた方が良いことは違いないが、たぶん読んでなくてもある程度面白く読めると思う。
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