ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件

≪あらすじ≫
人気番組のクイズ王が、喉を包丁で掻き切られ殺害された。ドSな美人刑事・黒井マヤは、相棒の代官山、ドMなキャリア刑事の浜田とともに捜査を始め、もう一人のクイズ王・阿南の元部下、伊勢谷を容疑者として絞り込む。しかし彼女は同様の手口で殺害された母親を残し失踪。その自宅には「悪魔払い」を信仰するカルト教団の祭壇があった―。
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
ドS刑事シリーズの二冊目。
ストーリーとしてはちょっと厳しい。クイズ王・阿南の周りで起こる猟奇殺人。そこに至る真相にしてはやや弱く、その後のエピソードに関してもクイズにのめり込んで妻をかまわず、その上浮気をし、自分の都合で別れ、さらにコンサルタントの言いなりのまま理不尽な解雇を社員に強要するという最低男だったのに、最後でなんかいいキャラにして終わらせたところは納得いかない、かな。
ミステリー・トリックに関しても苦しいと思ってしまった。狂気の伝染、というのは確かに面白いテーマではあるが、それはどちらかというとホラー作品でやるべきことではあってもミステリー作品でやるべきことだったのかな、と。例えばその狂気の伝染が意図的に最初から全て仕組まれていたことで、それを仕組んでいた黒幕が全ての殺人を教唆していたというのならまだしも、そうした伝染がある種の偶発的な結果で終わっているので「ミステリーでやる必要性」を感じない。
そういう意味で今回は前回以上にミステリー要素が弱い。弱いというか、刑事たちが事件を追いはするが推理をしない。残り80Pとか70P切ったところで途端に調査を初めて「そういえば女性刑事さん(もちろんマヤのこと)も聞きに来ましたよ」なんて台詞が続いて、あっさり事件解決ではね。
マヤが推理しないのはこの際仕方ないにしても、もう少しちゃんと代官山なりほかの刑事なりは推理して欲しいしその描写はするべきだ。別に私たちはマヤのドSっぷりを読むためにこの本を手に取っているわけではない。マヤのドSっぷりが作品としてのアクセントになるのは構わないが、そのために推理描写を放棄するならそれはあまりに本末転倒だ。
本作における大きなポイントは、代官様こと代官山が警視庁へ出向となり、警視庁のマヤ、新キャラでドMな浜田でのトリオを組んだことだろう。マヤのサドッ気が向く先が、代官山じゃなくてそのはけ口となる別のドMキャラを作ったところは、正直良かったところかな、と。双方合意でのSMならそれを第三者として観ている分には、SMへの耐性が違う読者でもある程度「ウケ」るように工夫しているのかな、と。そこは良かったと思う。
あとは浜田がどんな意味のあったキャラなのか、ということか。単なるドMキャラで終わるならそれで良かったと思うのだが、なんとなく強引に代官山とマヤの恋愛のライバル的なものに最後強引に帳尻合わせられた感じがしたのは大きな減点。完全に要らないシーンだっただろうに。
評価は、★★(2点 / 5点)。前作と比べると、ドSのベクトルはちゃんとサディスティックなSになっていたことや新キャラがドMではけ口になっていた点は改善されていた点だろう。ただ、ミステリー作品ではなくドSヒロインが横暴を振るう作品に劣化している。
Comment
Comment_form