化学探偵Mr.キュリー

≪あらすじ≫
構内に掘られた穴から見つかった化学式の暗号、教授の髪の毛が突然燃える人体発火、ホメオパシーでの画期的な癌治療、更にはクロロホルムを使った暴行など、大学で日々起こる不可思議な事件。この解決に一役かったのは、大学随一の秀才にして、化学オタク(?)沖野春彦准教授―通称Mr.キュリー。彼が解き明かす事件の真相とは…!?
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
書店で目について購入。後から知ったことだが、もともとはこのBlogでも取り上げている『このミステリーが凄い!』大賞での受賞歴を持つとのこと。言われてみればそんな感じの作風ではある。
さて概要としては化学の観点から謎を解く、という発想の作品。アイディアや観点は良かった。主に一般的にドラマやマンガ、アニメなどで用いられる化学や薬品の「間違った部分」を指摘して正しい知識で描いているのであれば、エンターテイメントとしても一つの教養としても面白い作品だと思った。
基本的には短編構成で一冊になっている。そのため読みやすいといえば読みやすい。ストーリーは『タレーラン』のような人の死なない日常系ミステリ。本格ミステリを期待して読むとガッカリするかもしれないが、それはジャンルの問題だと思うので最初からそういうものだと思って読んでいればそこまで落胆するようなものでもない。
個々の作品であまり目立ったところはないと思う。ミステリというかオカルト研とか、大学生のやる行動にしてはやや稚拙すぎやしないかと思うところが引っかかったくらいか。
ただ最終話でポンと、沖野が200万自分の貯金から出してきたのは意味が分からなかった。結局この最後のエピソードはクロロホルムの逸話を出したかっただけで化学的なプロセスでの解決には至っておらず、他のエピソードと比べても見劣りしてしまう気がした。
キャラクターはやや在り来たりでもう一工夫欲しいところか。探偵役の沖野はあまりにテンプレというか、先入観によって構築された准教授という感じ。自分に役目を押し付けられたからといってホイホイ謎解きに出向いているにはやや理由づけとして弱いかもしれない。いっそ、好奇心の塊、みたいなキャラクターにした方がまだ上手く回ったかも?
ヒロイン役の総務課の新人・舞衣は、かなり失礼な内面のヒロイン。もしかしたら彼女で賛否が分かれるかも。高校生くらいのヒロインならまだギリギリ分からないでもないが、大学の総務課の新人ってことは若くても23歳ってことだろ。それで准教授に皮肉と嫌味を言うなんて厚顔無恥。いくらなんでも精神年齢が幼すぎる。良く大学職員に受かったものだ……モデルでもいるのか?
評価は、★★(2点 / 5点)。化学の観点から謎を解く発想は面白い。それだけにそれを扱うキャラクターはもっと魅力的になるよう練り込んで欲しいところ。ストーリーはまずまず、かな(最後の短編以外は)。
Comment
Comment_form