櫻子さんの足下には死体が埋まっている 骨と石榴と夏休み
- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[櫻子さんの足下には死体が埋まっている]

≪あらすじ≫
北海道、旭川。とあるレトロなお屋敷に、「櫻子さん」が住んでいる。彼女は型破りなお嬢様。骨を偏愛し、骨と死体の状態から、真実を導くことができる。そんな彼女と一緒にいると、平凡な高校生であるはずの僕まで、骨と縁が深くなるようで…。夏の初め、櫻子さんに付き合って出かけた僕は、山道でひっそりと眠る骨に遭遇する。その骨に隠された悲しい秘密とは…。新時代の才能が放つ、最強キャラミステリ。
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
櫻子さんシリーズの二作目。
今回も短編三作の詰め合わせ。ストーリーとしては、一巻よりは全体的に良かったかな、というところ。引き続き登場しているキャラもいて、その辺りは繋がりが感じられる点はシリーズを読んでいる者としてはシリーズ作品ならではのところなので嬉しい。
一作目の「夏に眠る骨」は悲しくも優しく、未来がありながらも涙が付きまとうようなそんな絶妙な寂寥感がある。ゲストキャラである鴻上百合子は、正太郎と良い感じになりそうだったが、その辺のスピンオフはあるかな? まぁ、短編なら描きやすそうだけど。
二作目の「あなたのおうちはどこですか」は前後のプロローグ・エピローグにもかかってくるエピソード。あらすじには一作目の方が掲載されているが、作品としてはこちらの方が重要か。
育児放棄や虐待の疑いがある母親が、最期は赤ん坊を守るために自分の命を捨てたというエピソードはなんとなく日本人が好みそうなところ。なので、正太郎少年の語った後日談にはちょっと違和感もあったかな。とはいえ、彼女が少なくとも娘の治療を放棄していたのは事実なんだけどね。そういう意味で、残された遺族の二人の娘にとっては死んだ母親がこうだった、っていうのが読者としては救いなのか?
三作目は「殺されてもいい人」。富豪という設定を上手く活かしている内容だと思う。死んだのは本当にクズみたいな男で、それを病死で扱っているのはなかなか痛快というかなんというか。
身体に負担のかかる薬の飲み方をしていると知りながらもそれを言わないことがどこまで罪になるのか、というのは難しい気もするけどね。
全体的に家族(というか親)というのをだいび否定的に描いた一冊だと思う。人によっては不快に感じる部分や展開も少なくないかも。
メッセージ性としては、櫻子さんが赤ん坊に対して生きることを切望していたことくらい、か。あとは一巻と比べるとメッセージ性よりもキャラクターとしてのストーリーに重きが置かれていたのは少しだけ残念。
キャラクターとしては、櫻子さんの「骨好き」っていう設定が苦しくなってきたかな、とは思った。なにせ三つあるエピソードの中で骨にまつわるものが一つしかないのだ。タイトル的には「死体」であれば問題ないのだけど、そうなると櫻子さんは骨好きじゃない方が良かったんじゃないかな(変な話、死体好きの方がまだ……)
あとはやっぱり正太郎がキャラクターとして微妙かな。
評価は、★★★☆(3.5点 / 5点)。 一巻目よりは良かったかな、と。まぁ、それだけ。ストーリー構成や表現力が上手くなっているし、変な旭川を貶めるような言い回しがなくなって読みやすくなった点も評価している。あとは正太郎少年のキャラクターがもうちょっと、というところと、一巻のように随所に強いメッセージ性というか毒舌に等しいようだけど的を射ているような格言的なものが欲しいかもね。
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