泥棒だって謎を解く

≪あらすじ≫
中高生時代に親友だった四人の男。桜庭(サク)と清水(おりん)は長じて刑事に、久間と兵衛(ヒョエ)は泥棒となった。ところが、故郷の鷺ノ下市でこの二組が再会した翌日、事件が起きた。サクの恋人が遺体で見つかったのだ。物盗りの犯行―、しかも窃盗常習犯によるものとされたが…。やがて事件は思わぬ展開を見せる!話題作が続々、『このミステリーがすごい!』大賞の“隠し玉”作品がついに登場。
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『このミス』大賞の隠し玉。タイトルが文字通りの内容になっている。著者の影山匙さんはこれがデビュー作とのこと。
物語としては、犯罪者である泥棒が過去の因縁を払しょくするために謎を解く、という流れ。展開としてはなかなか面白かったと思う。ミステリーとしても、二転三転させる展開を持たせながら、全体的に軽くサクサクと読めるのも素晴らしい文章力といっていいと思う。
設定も妙がある。泥棒と、その対極に位置する刑事が幼馴染。行動力に幅を持たせるためなのか、あるいは刑事を被害者にしたかったからなのかは分からないが、幼馴染は2対2という組み合わせ。ただ、「刑事と泥棒(お互い初対面時は知らず)」という展開を序盤はほとんど活かせなかったかな、と思わないこともない。あとがきの批評でも書かれていたが、そういうところがある。
欲を言えば、相手の正体を探るような展開が序盤くらいはあっても良かったかな、と。あとは真犯人がとにかく擁護されていた割に、最初の被害者である西村とその恋人で刑事の桜庭の関係にフォローがなかったのは、フォローを入れる場所を間違えてないかな、と。あるいは、両方入れるか、両方入れないかのどちらかかな。
真犯人が十年にわたってしていたことは許されることではないのに、「黒幕に強請られていたから情状酌量の余地がある」みたいなフォローをしながら、結局、桜庭は報われなかったんだな、と。それなら西村も、感情表現が苦手なだけで実は別れを切り出した裏には桜庭を思って~とかがあっても良かったのかなと思ってしまう。例えば、真犯人の正体を知ってしまって、付き合い続けると桜庭に迷惑がかかる、とか。まぁ、死んだキャラにあれこれ言っても仕方ないが。
さて、キャラクターとしてはメインの泥棒二人。一人は頭脳役、もう一人は読者と同じ視点で物語の語り部役。ここはメインで推理を働かせるキャラと、読者に本を読ませるための語り部キャラを分割したのは良い判断だったと思う。泥棒2人組になった理由はもしかしたらこういうところにあったのかもしれない。
評価は、★★★★☆(4.5点 / 5点)。どころどころで首をかしげる点や、最後のフォローしている対象など思うところは若干あるものの、全体的に上手く纏まっていると思う。これがデビュー作というのだからなかなか素晴らしいのではないだろうか。次回作以降、あるいはシリーズ化することを期待してみるのも良いかもしれない。
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