レディ・ガーディアン 予告誘拐の罠

≪あらすじ≫
マカオの水上都市を牛耳るカジノ王・瓜上恭一郎はひとり娘を溺愛していた。その娘・千咲に対し、正体不明の相手から誘拐予告の脅迫文が送りつけられた。普通、誘拐は秘密裏に行なわれ、予告などありえない。だが、いたずらではない証拠に、千咲を乗せた送迎車で時限発火装置が作動する騒ぎが発生。元地下格闘技の女王・二毛作甘柿はこの奇妙な話に興味を持ち、マカオに飛び立つ―。『このミス』大賞シリーズ。
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
松岡圭祐さんの『Q』と『α』シリーズを読み終えて、再び宝島社の『このミス』大賞シリーズに戻ってきた。たぶん新刊、だよね? 積み上げられていた感じから「あぁ、新しいのが出たのか」と思って手に取ったから。
さて、話の内容は誘拐されたお嬢様の融解のされ方が密室から忽然と消えた形で、その謎をどう解いていくか、またその誘拐に隠された真相とは何かというものを解いていくのが大まかな基本路線だ。
主人公はアマガキ(二毛作甘柿)という元地下闘技場の女王が、かつての対戦相手だった真夜という女性にスカウトされて女性だけの警護チーム「レディ・ガーディアン」として、誘拐予告のあったお嬢様を護衛しているのだが……という感じ。だが、正直ミステリーとして彼女は主人公足りえるのかというのは疑問が残った。
結局、謎を解いたのは彼女ではなく中盤以降にポッと出て来た自称「占い師」である「ブレーメン」という名の探偵集団だ。謎を解いただけでなく、事の顛末の真相暴露から事後収集、さらには主人公のその後の人生まで面倒見させている始末。あまりにも都合がよすぎる集団だ。あれこれとその真相に至った理由を何とかこじつけしようとしていたが、それも出来ていたとは言いづらい。
存在そのものがチート、あるいはご都合主義の塊と言われても仕方なく、ミステリーとしてはどうなんだろう、と。彼女たちブレーメンが謎を解くのであれば、主人公としての視点はむしろ彼女たちであった方が良かったのではないかとすら思う。結局、アマガキがしたことってなんだったの? と。巻き込まれただけで、結局彼女は極端な言い方だが何もしてない。
ただネタとしては面白かった部分もあったと思う。特に「お嬢様の妊娠を周囲に知られず産婦人科に入院させるため、彼女の母親が実際の誘拐を利用してそのお嬢様を屋敷から出す狂言誘拐を実行する」というのはミステリーのネタとしては結構秀逸な部類に入るのではないだろうか。欲を言えばだからこそ、もっとその母親の出番は多い方が良かったし、最後まで母親は真相を明かさず娘のために身を呈していた方が物語としては良かったのかなと思わなくもないが。
キャラクターの設定としては、出て来たキャラの多くに意味を持たせたのは作者が苦心しながらも見事に「登場人物の意味を持たせる」ことが出来た部分じゃないかな、と思う。
一方でそれに固執しているようにも見えて、アマガキの親友の存在が突発的に出てきてそれがブレーメンに繋がったりとか、真夜の肉体は名前だけ出て来た拷問女にズタボロにされたらしいとか、出番皆無だった同じチームのナオの正体とか、ちょっとやり過ぎなところも見受けられる。
登場人物に意味を持たせることは出来たが、その結果として風呂敷を広げ過ぎて登場人物の数が過多になっているように思えてしまい、もっと数を減らしてシンプルに、設定面でも無駄な描写は避けてもっと必要な部分の描写数を増やすことが出来たのではないかと思わずにはいられない。
評価は、★★☆(2.5点 / 5点)。話の根幹となるミステリーのネタはシンプルでオーソドックスながらそれを思いついた母親の機転が光っているように見えた。対照的にキャラクターは複雑化とご都合主義が進行しており、話の根幹のようにシンプルにオーソドックスにするべきだったように思う。
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