[再]新機動戦記ガンダムW 第31話
- ジャンル:[アニメ・コミック]
- テーマ:[新機動戦記ガンダムW]
『ガラスの王国(サンクキングダム)』
≪あらすじ≫
サンクキングダムに招かれたヒイロとカトルは、国内の学園に編入した。ヒイロはドロシーの挑発を受けフェンシングの試合を受ける。ヒイロの正体を知るドロシーは、あえて暗殺された平和主義指導者とガンダムパイロットの"ヒイロ・ユイ"の話をはじめる。
そのころ、財団派OZの勢力から逃れてきたトレーズ派は、サンクキングダム周辺の森林に身を隠していた。財団派の狙いは、サンクキングダムを戦火に巻き込むことだ。負傷者もいるという情報を聞きつけたリリーナは彼らを受け入れることにするが、トレーズ派は自爆を覚悟していた。
サンクキンダム市街地さえも戦場としようと企む財団派OZを前にノインはリリーナに内証で用意していたトーラスで迎え撃つ。ヒイロは、トレーズ派の元へ赴き、無防備なサンクキングダムを守ってほしいと依頼するのであった。トレーズ派の活躍とカトル、ノインのトーラス、ヒイロのウイングガンダムによって何とか戦火は免れた。
しかしこの一件により、ノインがひそかに用意していた軍備をリリーナの知ることろとなった。完全平和主義に反する行いに処罰を覚悟したノインだったが、リリーナは防備の必要性を理解し、ノインの行動に賛同するのであった。
(公式HP TVSeries Story 第30話より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
理想と現実の狭間。
正しくそんな感じだろう。理想論を唱えるリリーナとサンクキングダムに迫るロームフェラ財団と戦争という名の現実。じゃあ、それにリリーナは理想論と彼女が唱える「話し合いでの解決」によって全て乗り越えることが出来たかというと、そんなことはない。
相手は一方的に話し合いの場すら拒否し、自分たちの論理をリリーナに伝えるだけ。それで話し合いが成立するはずもない。相手は必ずしも自分と同じ土俵に立ってくれるとは限らないのだ。
これこそが、今回リリーナが一番に痛感したことであり、何より今後彼女が「クィーン・リリーナ」となることを決意した一つの原因だろう(相手が同じ土俵に立ってくれないのであれば自分が同じ土俵に立ってしまえば良い、と)。
『ガンダムW』を語る上で一つの特徴は、主人公たちが「負け続ける戦い」をしていることだろう。EWでデュオが明確に口にしたことから、それが一つの明言・格言に近いものとなっている。それは現在連載中のEW版のTVシリーズを描く『敗者たちの栄光』でも、そのタイトルに『敗者』が使われていることからも明白だ。
ただ、負け続けているのは実はヒイロたちだけではない、ということでもある。
その一人がリリーナなのだろう。ドーリアンとして父を失い、復讐に失敗し、サンクキングダムを再興するもまた滅ぼされ、クィーン・リリーナとして財団内部から変えようとするもその矢先にその座をトレーズに奪われ、兄の大罪を阻止しようとするもそれすら上手く行かず……。
でも、それを経ているからこそ彼女はのちのEWで平和に必要なものが何なのかを強く悟り、示し、地球圏における完全平和主義を浸透させ実現に至っている。今連載中のFTのリリーナに足りないのはきっとこうした挫折や敗北なのだろうな、とも思えるが、もうあっちはなんかパラレルワールドっぽさすらあるから何とも言えないけどw
完全平和主義を守るための防衛力としての兵器。その是非というのは、また面白い部分だろう。まぁ『W』ではこれ以上そこに突っ込むことはあまりないのだけど。
主義と現実は確かにそれでは矛盾している。けれど、じゃあ「完全平和主義」って何かというところでもあると思うんだよね。EWで五飛も口にすることだが「兵士を封印し、兵器を捨てればそれが平和だという考えは間違っている」というのは正しいことだ。
そもそも、兵士や兵器の線引き・カテゴリーが難しい。どこで目にし耳にしたかは忘れたが、リリーナは「ナイフとフォークも武器になる。貴方はそれすら捨てろというのですか」という反平和主義の質問に、「その時はフルコースを用意して待っていますわ」と答えたとかなんとか。まぁ、それが公式だったのか二次創作だったのかすらもう記憶は定かではないのだけど、要するにその指摘は正しいってことだ。
何を以て「平和」を定義するのか。それは同時に何を以て「戦争」を定義するのか、というところでもある。人を殺そうと思えばそれこそ生身の腕一本で十分だ。でも、その腕一本が人の命を救うこともある。
モビルスーツもまた今ではこの世界において兵器の代名詞となっているが、一方でモビルスーツはコロニー製造のためのパワードスーツだったという側面もある。モビルスーツ(の原型)があったからこそ、コロニーはあるし、たぶんあの世界では大規模な災害などがあればモビルスーツや作業用ワークローダー的なものによってがれきの撤去や人命救助などをしているのではないか。
そういった部分を含めて「戦争」「平和」、「兵器」「道具」こういったものをどう定義し線引きするのかっていうのが、たぶん大事なのだろう、たぶんね。
さて、今回は待望のウイング復活。でも、確か次に登場した時にはもう……(涙 ちなみに作画も良かった。全部が良かったわけではないのだけど、例えばリリーナが「止めて、ドロシー!」というシーンのリリーナの作画はだいぶ力が入っていたと思う。
ウイングがサーベルで輸送機の外壁を内側から切り裂いて頭部を露出するシーンとか最高だと思う。作画の良さと印象がばっちり決まっている。『W』で印象に残っている作画の五本指には入るね、間違いなく。
残り四つ? 「オープニング」「最終話のウイングゼロとエピオン」「デスサイズヘルvsヴァイエイト+メリクリウス」「朝焼けに飛び立つバードモードのウイング」かな。初出撃のエピオンとか、資源衛星壊すところのウイングゼロとか、スペースポートを襲撃するゼロとかも良いと思うけどw
あと、当時は小学生だったのでまさかの必殺トーラスフィンガーに大笑いしてた覚えがあります。
真面目な部分ではサンクキングダムの授業でもフェンシングをしている事が暗に一つの皮肉なのかな、と。スポーツとか貴族の嗜みとか言いようはいくらでもありますが、アレも元は戦争の手段ですからね。それを踏まえて敢えて科目に取り入れてるのかもしれませんが。