るろうに剣心 京都大火編 感想
原作既読、キネマ版未読、実写版一回目はTV放映版を視聴済み。
さて、周囲の方の感想を目にすると想像以上に良いみたいだったので観に行ってみた。率直な感想を言うなら、面白かった。最大の改善点は、実写版も二回目となってどうすれば実写版として映えるのかというところを理解している点だと思う。
例えば、前回の実写版の時には双龍閃や牙突を再現しようとしていたものの、それとチャンバラである殺陣に肉弾戦とスピード感をカンフー風味に取り込んだ雑魚戦とのクオリティの差が酷過ぎて(もちろん再現しようとしていた方のクオリティがあまりに低い)、そこがアクション映画としては萎えさせる要素の一つだった。
それが今回はほとんどなかったと言っていい。斎藤は牙突を使わず(まぁ、ファンとしては一度くらい「牙突」とは言わなくても「左片手平突き」くらいはしてほしかったかもしれないが)、剣心も飛天御剣流の技を振るわなかった。
じゃあ、それで戦闘シーンは悪かったかというとそうではない。むしろ、そういった超人的要素を排除して現実的に再現出来るアクションシーンとして昇華しているのでかなり良かったと思う。
個人的にはやはり新月村での雑魚戦が、『るろうに剣心』の実写版としては最も良いと思っている。私的に、あくまで私的にだが、地を這い蹲ったり、その場でカンフーのように回転して足払いするようなのはあんまり「緋村剣心」というキャラ像に余りあってなくて好きではないのだけど、新月村での戦いではそういうところをあまり取り入れず、剣心が逆刃刀による高速剣術で相手を完全に圧倒している。たぶん、一番原作に近い戦闘シーンの実写化じゃないかな。
他の戦闘シーンも良好。終盤では剣心が、彼らしく超人的な跳躍力を発揮するシーンもあるが、前回の斎藤の牙突に比べれば全然自然な形で使われており、アクションシーンは十分に面白い。
アクションシーンでもし課題があるとすると、たぶん一対一の戦い方を今後どれくらい昇華させて続編に繋げられるか、ってことだと思う。集団戦・雑魚戦ではバッタバッタとなぎ倒していく殺陣のクオリティが高いが、それが一対一になるとまた描写の仕方も変わって来るはず。
今回では刀狩りの張との一戦は、建物の構造を利用したアクションを多用することで一対多の戦いとの違いを取り入れていて良かったが、反面刀が折れていたこともあって剣心が(というか剣術メインのキャラが)徒手空拳を多用し投げ技を使うなど違和感も大きいので、続編では志々雄との決着や蒼紫との戦いもたぶんあるんだろうからその辺りの一対一がさらにどこまで昇華するのか、というのが楽しみ。
ストーリー面でいうと、大久保暗殺からの京都編を再構築している(前回の映画化のせいで斎藤との一戦はカット)。
一番の大きな違いは、師匠が出てこないので剣心が精神的に成長しないまま志々雄の大挙を迎えてしまったことだ。その辺も影響しているのか、剣心は原作では「同じ人斬りとしての心理」を読んで志々雄の大阪湾脱出からの東京湾強襲を察知したが、それはギリギリまで引っ張られることとになった。さらに戦艦・煉獄上での剣心も、人斬りに戻りそうなシーンがあるなど精神的にまだ未熟というか傷を負ったままの状態を続編まで引っ張ることになっている。
苦しい点といえば蒼紫か。前回出てこなかったので剣心との私的な因縁がないので登場させる理由としてはかなり厳しい。操を含めてその辺りの御庭番に関する描写は絶対数も少ないこともあって、終盤での蒼紫vs翁の戦いがアクションシーンは良かったのにその中身に全く共感出来ないというか、意味を感じなかった。いっそのこと、蒼紫は存在そのものを削除しても良かったのではないか。
また左之助も厳しい。修行シーンがないので二重の極みを習得してないし、本編の本筋にも絡んでいないし……。
話を戻すが、物語としては薫が連れ去られたうえに、煉獄の甲板上から落とされるという事態もあって、その後の薫の行方が分からないままエンディングクレジットを迎えているのも大きな違い。ただ薫が連れ去られるという部分や、剣心が飛天御剣流を今後使えなくなるかもという暗示が序盤で恵の口から語られるなど原作ではその後の人誅編に近い部分を取り入れている。特に剣心は過去に巴の婚約者・清里を斬り殺したことや斬殺された清里に鳴いて駆け寄る巴を思い出すシーンもあり、原作ファンなら「ここでこのカットを入れてくるか」と感嘆するシーンもある。っていうか、巴役って誰だったんだろ?
再構築で一番良くなっているのは、剣心が旅立った後の薫がウダウダ悩んでいなかったことか。もっと表面上強気に振る舞っている点は、亡き父に代わって神谷活心流の師範代として切り盛りしている「神谷薫」というキャラクターの本質を、ある意味で原作よりも的確に捉えていると言えるのかもしれない。
キャラクター面でいうと、以前からのキャストはまぁまぁ。佐藤さんの剣心もだいぶ慣れて良い感じかも。ただ弥彦と佐之助はダメだがw
蒼紫役の伊勢谷さんはかなり蒼紫の実写化として遜色なかった気がする。キャスティングとしてはベストと言えるかも。宗次朗役の神木さんもそんな感じだったが、もう少し底抜けの明るさを見せても良かったかなとは思った。喜怒哀楽のうち「喜」以外の感情が欠落しているという設定を、実写版でも継承しているかは分からないけど。
志々雄役の藤原さんは、見た目がアレなので誰がやっても大差ないように思うが、台詞を口にしているときのオーラみたいなものを考えるとベターな選択だったかもしれない。というか、最近藤原さん悪役しかやってない気がするのだが、すっかりその手なのか?(笑 まぁ、今期のTVドラマで刑事ものやってたと思うけど)
そして最後の登場、謎の男。福山さんがキャストってことは、まぁ考えられる原作キャラは師匠なんだろうな。師匠だった場合、当然、奥義継承による天翔龍閃伝授になるのだろうが、それを実写で再現できるのか、というところが最大の問題になる気がする。キャストとしては福山さんが「師匠」のキャラ像と比べてだいぶ「(物理的に)小さい」感じがするので(というか師匠がデカ過ぎるのだが)、そこに違和感はありそう。
まぁ、福山さんだから師匠じゃなくて実は生き延びていた坂本龍馬という可能性も(ねーよwww
評価は★★★★☆(4.5点 / 5点)。若干、キャスティングの微妙なキャラや粗はあるものの総じてみれば良質なアクション映画。原作らしい大技や超人技はなりを潜めるが、現実にあり得そうな風味にアレンジされている殺陣シーンや集団戦は十分観ていて面白い。
剣心の映画は以前のしか見ていませんが、評判良いようなので見に行こうと思います。
私もあの牙突はせめて投げろよと。
原作再現に力を入れているとはいえ、弥彦は原作どうり10歳だとやっぱり幼すぎますね。印象的に言えばいっそ元服前の13歳くらいの設定にしてもよかったのではと思います。