ブラック・コール 行動心理捜査官・楯岡絵麻

≪あらすじ≫
行動心理学を用いて相手のしぐさから嘘を見破る、警視庁捜査一課の美人刑事・楯岡絵麻。その手腕から“エンマ曜”と呼ばれる。元教え子を8年間監禁した容疑をかけられる美術教師の真相とは。他人のパソコンを遠隔操作して殺人予告を書き込んだ容疑がかかるプログラマーと、彼についた人権派弁護士との対立。そして15年前に絵麻の恩師を殺害した犯人との直接対決など、難事件に挑む!全4話収録。
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
『サイレント・ヴォイス』の続編にあたる第二巻。四話を収録している。ただ、最初に手を出したのはこっちが先だったんだけどね(笑
さて、内容はあらすじの通り行動心理学を学びそれを元に相手の嘘を見抜く凄腕の取り調べ刑事の楯岡絵麻がかかわった事件についてのあれこれ、という感じ。
事件は現実にあったものを題材にしていることが多いのが特徴、かな。ただ現実にあった事件や犯罪に対して作者が自論を持っていてそれを劇中のキャラがメッセージとして発している、というよりは単にネタとして現実にあった事件や犯罪を使っているだけ、という感じ。
もちろん、実際の事件とあまりに密接しているとそれはそれで問題があるので細部にはアレンジを加えているものの、ある程度ニュースをちゃんと見ていればどの事件の元ネタが何の事件なのか、というのはある程度予想が出来るだろう。そういった事件に対して、行動心理学を持つこんな刑事がいたらどうなるのか、というのが本作の在り方なのかもしれない。
在り来たりだけど面白かったのは第三話かな。あとは第二話か。この辺りは、犯人を追いつめていく様というか犯人を追いつめるための手段が、行動心理学だけではなくそれを応用して現行犯として逮捕出来るものとなって工夫されている点が良かった。
気になったのは、第四話の描写か。犯人の視点からの犯行の様子の回顧録のようなエピソードがあるが、それに対する描写が生々しく、ハッキリ言ってしまえば他の部分の文章や文体と比べてあまりに浮いてしまっている。ほかのシーンではここまで濃密な描写はなかったはずなのに、これらのシーンだけ妙に生々しく濃密で濃厚な描き方となっていて、そこは内容よりも違和感しか覚えなかった。
また肝心の第四話における犯人とのやり取りや追い詰めは甘く、最後も犯人に自殺されるという展開はストーリーとしてはいかがなものなのか、と思ってしまった。たぶん、現実にこういう事件があってこういう犯人がいたら自殺する可能性もあるだろう。
でも、これはフィクションの読み物。それを考えると、他のエピソードに比べて肝心かなめの第四話の完成度の低さは気になってしまう。
評価は★★★(3点 / 5点)。行動心理学に興味があるならある程度面白く読めるはず。ただ第四話だけは異質な描写、犯人とのやり取りの粗さやつめの甘さみたいなのが目立ったのが残念。
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