2014 FIFAワールドカップブラジル大会 日本代表総括
四年後の代表と共に戦うために
詳細は追記からどうぞ。
◆世界との差
なんて言葉を今更使う必要があるのかとすら思うが、一部の選手たちの「優勝」発言にサポーターやマスコミが騒いでしまったことを想うと、今一度日本選手も、サポーターも、マスコミももっと冷静に世界との差をちゃんと考えておくべきなんだと思う。
無論、選手たちが世界との差を本当に判っていないのかといえば、それはNOだとも思っている。個々の試合後のインタビューが記事になっているものに目を通すと、世界との差や力関係をほとんどの選手が理解しているのだろう。だから、選手たちの「優勝」発言は自分たちを鼓舞するものだったはずなのに、それが次第に一人歩きした結果としてプレッシャーとなったことは想像に難くない。
だから、そのプレッシャーこそが世界との差ではないかと、私なんかは素人ながらに思うわけだ。
勝利を求められるプレッシャー? そんなものはどこの国のどの代表選手も当然持っているものだ。決して日本選手だけではない。むしろ日本代表なんかよりも、母国開催のブラジル、連覇が求められていたスペイン、古豪・強豪とされながら優勝していないor遠ざかっているイングランドやイタリア、アルゼンチンなどの方がよほど国民から強大なプレッシャーをその背に背負わされているはずだ。
それでも勝ち進んでいるチームがある。つまるところ、そういったプレッシャーを背負って立って、いかに普段通りに出来るか。それが出来なかったのがこの大会の日本チームだ。監督も、一部の選手たちも、とてもではないが「普段通り」のスペックを発揮できたとは到底思えない。
サッカーは、やっている場所も使っているフィールドもボールも全部同じだ。そんな中で試合をする。その試合に勝つために必要なのは単純に、「自分たちのスペックを最大限に発揮して相手を上回る」ことと「相手のスペックを可能な限り封じ込めることで自分たちが上回ること」の二つに尽きるのだろう。
今の日本代表チームの選手たちの多くが前者を口にする。では、後者のことをどれだけの選手や監督が口に出来ただろうか。
自分たちのサッカーをすれば相手は関係ない。自分たちのサッカーが出来ればどの相手でも勝てる。
常々選手たちはこう言ってきた。確かにその通りだ。だが、それは「自分たちのサッカー」とやらを相手にさせてもらえれば、の話である。
サッカーとは相手と同じ場所、同じ時間、たった一つの同じボールを巡って競う競技である。だから常に相手がいる中で試合をする。そのことを多くの選手たちは忘れているのではないか。
相手がいれば、相手だって「自分たちのサッカー」を目指すし、その中で「相手のサッカー」をさせないようにする。当然のことだ。相手のサッカーをさせなければ、その分だけ自分たちのサッカーが出来る可能性も高まるのだから。でもその意識が今の代表には欠如しているようにすら見える。
なんとなくこの代表は、かつてのジーコジャパンを見ている気分になっていた。選手たちの創造性を重視したジーコ監督によって自由が与えられ、日本版「黄金のカルデッド」と呼ばれていたも、自分たちのサッカーをしようとしてそれが敵わず完膚なきまでに負けた印象が未だにある。
一方で、その後の岡田ジャパンの際には逆だった。あまりに事前の強化試合の悪さからキャプテンやフォーメーションを変更し、相手の長所を消す守備的なサッカーをしていたわけだが、その結果がベスト16だったわけだ。
そして今また自分たちのサッカーをしようとして、再び1勝も出来ぬまま予選敗退となった。
ただ、だから「守備的なサッカーに戻すべきだ」とは全く思っていない。大事なのは「自分たちのサッカー」だけでなく「相手のサッカー」を封じるための戦術だったり、連携だったりといったものをもっと磨かないと日本はこの先、さらに上を目指すことは出来ないのではないか、ということなのだ。
そして、それをサポーターやファンである私たちは見守っていかないといけない。選手たちだけが「世界との差」を感じているだけではダメなのだ。これから十年、二十年、あるいは五十年先の日本サッカーを見据えた時に、もっとも成長が求められているのは、実は私たちサポーターではないのか。
サッカーに対してシビアな目を向け、良いプレーには賞賛を、悪いプレーには批判を、勝利には拍手を、敗北にはブーイングをぶつけていく。批判ばかりではあまりに穿った見方になってしまうだろうが、批判が全くない生ぬるい見方が選手たちにとってプラスになるとも思えない。
勝ち点1しか取れなかったチームに「よくやった」しか言えないこと(もちろん言ってもいいが、勝ち点1しか取れなかった事実は踏まえて非難もすべきではないか)もそうだし、少なくとも日本が負けた試合なのに横断歩道で騒いでいるようでは、日本サッカーは育っていかないのではないか(むしろ育成を阻む害悪でしかない気すらする)。
日本のワールドカップは終わった。でも、次のワールドカップのスタートでもある。チームそのものは一度解散し、ザッケローニ監督が続投するのか交代するのかは分からないが(まぁ、この結果で続投は多分ないと思うが)、どの道チームは再編となるだろう。
「四年後、頼むぞ!」「四年後に期待しています」
それじゃダメなんじゃないか。その四年間、私たちは安穏と時間が過ぎるのを待っているだけでいいのか。また熾烈な地区予選に選手たちは臨まなくてはいけない。世界のサッカーは進化し続ける。なら、私たちもまたその四年間で少しでも勉強し、時に選手たちを賞賛し、時に選手たちを叱咤し、鼓舞して有用なエールを送り続けるべきだ。
「四年後も同じ舞台に立てるよう、一緒にやっていこうぜ」
ワールドカップを「お祭り」ではなく真の意味で「世界一」を競う場として捉え、日本代表を送り出せるような四年間にサポーターもしていければいいんじゃないかな、と思う。
◆ワールドカップ選手採点
あくまで素人目で個人的なものです。どちらかというと、自分で書いておいてあとで有識者の方の採点とを見比べて自分の見る目をさらに養うためのものなので。
チーム:4.0
四年間積み上げてきたものをぶつけられかといえばそうではなく、むしろ四年間メンバーを固定してまでやってきたことはんだったのかと思うようなプレーや戦術が目立った。
とてもではないが、集大成なんて呼べるようなサッカーが出来なかったことは悔やんでも悔やみきれない。
GK
川島永嗣:6.0
三試合で六失点。まぁ、コロンビア戦の四失点は致し方ない部分もあるのだけど。
ギリシャ戦など好セービングも観ることが出来て安定して実力を発揮していた。欲を言うならば、コートジボワール戦の「魔の二分間」は同じようなやられ方で失点しており、GKとしてDFとの連携や支持だしに疑問は残る。
DF
内田篤人:6.5
今大会、日本チーム限定ならばMVPは間違いなく彼だろう。浮き足立っていつも通りのプレーが出来ないチームメートが多い中で普段通り、これまで通りのサッカーを続け、冷静かつ大胆に右サイドから何度もチャンスを演出して見せた。
アスリートの引き際は自分たちで決めるものなので何とも言えないが、少なくとも今の代表チームならまだ彼の力や経験を多くの同胞が必要としていると思うので代表引退は勿体ない。欲を言えば「シャルケの内田」が観たかったか。
長友佑都:5.0
とてもではないが世界一のサイドバックには程遠いパフォーマンスに終始した。運動量とスタミナ、一対一で仕掛ける度胸は認めるが、仕掛け方も仕掛けた後のクロスもあまりに一辺倒になっていて、とてもではないが「質より量」でしかなく中身に欠けた。さらに守備ではコートジボワール戦で「魔の二分間」を共に左サイドから許しており、ストリングポイントだったはずの左サイドは完全にウィークポイントと化していた。
攻撃の「個」を磨くのは良いが、守備の「個」や「連携」はそれ以上に磨いてほしい。
森重真人:5.5
もっと使って欲しかった選手の一人。とはいえ、ここ数試合でしっかりと存在感をアピールした結果でもあると思うので四年後に向けて始まる地区予選からレギュラー奪取からレギュラー固定に繋がることに期待。
吉田麻也:5.5
センターバックとして三試合で六失点は多すぎるものの、コンフェデなどで一時見せていた不安定なプレーを振り返れば、まだ成長というか変化というか、とにかくプラス方向への上積みを観ることが出来た選手でもあったと思う。センターバックとして海外に出ていることは貴重だし、そこで得た経験は大きな意味がある。
日本人としては恵まれた体躯でもあるので、そのストロングポイントをさらに活かしていけることを望む。
MF
遠藤保仁:5.0
年齢的には最後のワールドカップになっただろうが、本人としてはどうだったのか、と思ってしまうほどパフォーマンスは良いとは言いづらい。「日本の心臓」とまで言われたが、世界相手には能力的に劣る日本のボランチでは守備に追われるシーンが多く、心臓としての機能を彼個人としても、チームとしても引き出せたかは疑問が残る。
途中出場で流れを変えられる、とも強化試合では評されたが結局、それが出来なかったのが日本にとっては誤算だったのかもしれない。
山口蛍:6.0
豊富な運動量と守備力からすっかりレギュラーの座を奪取。それが「長谷部・遠藤(選手)」というコンビでこれまで固定して戦ってきた日本チームにとってプラスだったのかマイナスだったのか、というのは少し考えてしまうところでもある。
とはいえ、これからは順当にいけば新監督次第とはいえ当面ボランチポジションでは高い信頼を寄せられるだろう。この経験が、次のワールドカップに向けての良い経験になったと良いと思う。
青山敏弘:6.0
最終戦のみの出場となったが、レギュラー陣と遜色ない動きを発揮。特筆すべきは縦への意識の高さ。前線へのパスの意識の高さは、シンプルな攻めが必要な時にこそ求められると思う。出場時間こそ少ないが四年後、遠藤選手や長谷部選手が一線級の戦力というのは年齢的に考えられないので、ここでの経験を山口蛍選手と同様に生かして四年後を目指す戦力になってほしい。
長谷部誠:6.5
出場時間がやや短かったものの、前回大会からのキャプテンとしてチームを鼓舞し続ける姿は変わらなかった。地味だが相手のファウルを誘うようなプレーや、攻めの起点になるパスなど随所に彼らしい光るプレーを観ることが出来たのは、とりあえず怪我からの復帰はひとまず成功と思えたのが良かった。
IFを口にしても仕方ないが、もう少し万全の状態が早期に整っていればと思わずにはいられない。
FW
本田圭佑:5.0
優勝を公言する選手とは思えないほど低調なパフォーマンスに終わった。見せ場はコートジボワール戦の一点目と、コロンビア戦のところどころといった程度。香川選手同様、所属クラブでの出場不足は影響しているのかどうか分からないものの、私たちの知るロシアに居た頃の彼ではないかったのは間違いない。
このままミランで朽ちるのか、試合に出れるチームで自分を磨き直すのか、あるいはミランで輝ける魂胆でもあるのかは分からないが、ビッグクラブへの移籍しただけでレベルアップするわけではないことを自覚するべき。
有言実行と言われてきた男、ここに堕つ。
清武弘嗣:-.-
出場時間があまりに短かった。もちろん、長く出場していれば日本の戦力になったかどうかというのは「たられば」の話なので断言することは難しいが。
とはいえ、まだ24歳。四年後は28歳と、順当にいけばサッカー選手としては最も脂ののった時期を迎える。四年間の間に、同年代の香川選手らを凌駕する力を磨き、レギュラーに座に居て欲しい。
岡崎慎司:6.5
ドイツでの好調を維持してワールドカップに突入。コロンビア戦で見せた得点や、豊富な運動量によってチームに多大に貢献。しかしながら、ドイツでの得点力を考えるとパフォーマンスとしては最高だったとは言いづらい。
周りとの連携が少しでもズレると完全に空気となって存在感が薄れることもあるため、チームメイトに「ボールを持ったらまず見ないといけない」と思ってもらえるだけの選手になることが今後は必須か。
香川真司:4.5
何をしにブラジルまで行ったのだろうか。そんなことは言われなくても本人が一番感じていることだとは思うが、あまりに結果としては不甲斐ないとしか言いようがない。ギリシャ戦の途中出場の最初の方は身体もキレていたしプレーも良かったが、それが全く持って持続しなかった。
これがメンタル面の弱さのせいなのか、それとも所属クラブので出場不足のせいなのか、冷静な自己分析を求む。
柿谷曜一朗:5.0
ワールドカップ前まではワントップの筆頭候補だったものの、その後大迫選手や大久保選手に追い抜かれてしまった。チームの方針、監督がワントップに求めていたモノによるものとはいえ、それだけ他の選手にあっても自身に足りないものがあったという証拠。
今後、Jリーグで頑張るのか、海外に武者修行に出るのかは分からないが、四年間の課題はその「足りないもの」を埋めた上で、絶対的なストライカーになることだろう。
大久保嘉人:5.0
サプライズ選出と言われているが、実際はJリーグ屈指のストライカーだったため日本の代表選手として考えれば当然と言えば当然の選出。それだけに決定機すらなく無得点だったのならまだしも、数多くの決定機がありながら外し続けて三試合無得点では、選出されるに値する選手だったのかは疑問が残ってしまった。
戦犯なんて単語は使いたくないが、彼が決定機を一つでも決めていればもしかしたら、と思わずにはいられない。
大迫勇也:5.5
直前でワントップ最有力に躍り出たが、ストライカーとしてのパフォーマンスとしては無得点では低調だったと言わざるを得ない。
とはいえ、まだ日本のワントップの中ではボールが収まるタイプのFWだと思えたし、前線からのプレスも動いていた方だったかな。四年後はまだ27歳。四年後までの大きな飛躍をもっとも期待したい選手の一人。
監督
アルベルト・ザッケローニ:3.5
先発メンバーを固定して戦術の理解度と連携を重視してきたのにも関わらず、大会になって直前でパワープレーに出たり、固定していたメンバーを外したりと意味不明な采配が目立った。実際の試合でも交代枠を残したまま不本意な結果に終わるなど、ずっとブレずにやってきた割に、大会が始まった途端にどうしてこうなったのか。コンディション不良の選手を外すのであれば本田・香川選手の多用も意味不明。
どうせ敗北するなら、周囲から先発メンバーの固定を非難され続けてもずっと続けていたように、そのスタイルを貫いて負けて欲しかった。
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