万能鑑定士Qの事件簿 VII
- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[Qシリーズ(松岡圭祐)]

≪あらすじ≫
純金が無価値の合金に変わってしまう〈逆錬金術〉の謎を追って、凜田莉子は有名ファッション誌のカリスマ女編集長に接近する。小説の盗作騒ぎから5億円のペンダント紛失まで、数々の事件を解決に導いた莉子の行く手に、最大の謎が出現した。沖縄・波照間島で育った無垢で天真爛漫な少女が知性を身に付け、いまやマルサにも解き明かせない秘密の真相解明に挑む。書き下ろし「Qシリーズ」第7弾!
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
シリーズ第7巻。前巻がちゃんと鑑定士をしていたこととは対照的に、こちらは半分くらいが秘書兼マルサの密偵。あるいは鑑定士というより探偵と、この本のタイトルはなんだったっけと思うような役ばかり。まぁ、たまにはこういうのもいいだろう。良い意味で前の巻とのギャップともいえる。
さて、内容としては大部分がファッション誌の秘書(第二秘書)という感じ。もう少し純金が不純物だらけの合金に変わってしまうところについて、あるいはわざわざ潜入しているのだからマルサの内偵としての要素を期待したかったところだったが、割と内輪もめ的な感じだったのが少し残念というか、あらすじを読んでから読み始めている身としてはちょっと肩すかしだった感じかなー、と。
そのため、肝心の脱税や純金の描き込みがやや不足しているようにも見える。不足しているっていうのは誤解があるかもしれないが、本来盛り上がり結果的に文量が増えるだろう山場の文章量が少ないように感じる、ということ。まぁ、それは今更といえば今更なんだけどさ。
とはいっても、莉子の観察眼と豊富な知識量に関しては申し分ない。先にもあげたように鑑定士というよりは探偵としての風味というか味付けが強い巻だった分だけ、今までとは違った切り口や形での知識の披露、推理力の展開が出来ていたのは面白かった。
でもまぁ、莉子の聴力が相変わらず高いな、とw 音の聞き分けなんて出来るかよ、とも思ったが、そういえばハイパーインフレ事件の時もそんなことしてたよね(苦笑 むしろ知識の収集よりもこの音の聞き分けの方がよほど凄いんじゃwww
キャラクターの観点でいうと、いよいよ莉子と悠斗の恋も描くかどうかという微妙なラインかな。悠人もイケメンなわけで彼がモテないはずもなかったわけだが、7巻にしてようやく彼のイケメンっぷりも発揮。重要人物の一人である第一秘書・園部遥菜が悠斗に対して割と惚れていたことは恋愛要素としては大きな意味があっただろう(主に莉子にいろいろ考えさせる意味で。そういった描写はほとんどなかったがw)。
遥菜からも悠斗に最後の最後で莉子に対する指摘もあったし、さてこれからどうなるのかというところかな。少しずつ進展させるのか、そうでないのか。作品が長く続けば続くほど、惰性で関係を発展させずにズルズルとさせる作品も多いが、この作品はどうなんだろ? まぁ、それはこの後の巻を全部読んでいけば分かることだけどね。
評価は★★★★(4点/5点)。鑑定士という感じではなかったが、探偵要素が強めになっているのでここまでのシリーズの中ではミステリー要素というか、探偵っぽい要素が強めで、そこは今までとは少し違う「変化球」になってて面白かったと思う。
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