万能鑑定士Qの事件簿 VI
- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[Qシリーズ(松岡圭祐)]

≪あらすじ≫
町工場が作った洋服を、世界的に名の知れたショップに流通させられると豪語する女が現れた。雨森華蓮・26歳。海外の警察も目を光らせる彼女のもうひとつの顔、それは“万能贋作者”だった。彼女が手掛ける最新にして最大の贋作、MNC74とは何か。鎌倉の豪邸に招かれた凜田莉子を待っていたのは、不可思議にして目的不明な鑑定依頼の数々だった。莉子にとって最大のライバル現る。書き下ろし「Qシリーズ」第6弾!
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
シリーズ第六巻は、探偵系のお話ではおなじみ(?)なライバル的な犯人役の登場。お約束ではあるが悪くない。それも犯人役である雨森華蓮が莉子に負けず劣らずの観察眼と洞察力を身に付けているのであれば、なおのことだ。ライバルならこうでないといけない。
その結果として細々とやっていたはずの莉子が一躍有名人になってしまうのはいろいろ思うところもあるけどね。その有名っぷりが長く続くのかどうかは次巻次第といったところか(まぁ、エピローグで店がにぎわっていたのは一時的なもの、みたいな暗示もあったが)。
さて、本編では比較的へこたれずにその洞察力と観察眼と身に付けていた知識の応用力でいろいろなものを見抜いてきた彼女だが、今回はかなり後手に回っていたのが印象的。不可思議な鑑定が延々と続く理由や鑑定士が複数呼ばれていた理由など、疑問がたくさんあった中でその真相は良かった。これをミステリーと呼んでいいかは分からないが、私は十分に面白いミステリーだったと思う。
計算されて仕組まれていた展開や理由はここまでのシリーズの中では屈指のミステリー。
あとは読了感が良い。
幾つか指摘しておくと、ここまで本当にあまり役に立たなかった悠斗が、ようやく犯人のボロを引き出す糸口を手にしており、推理上で役に立ったことだろう。ただ、その前にはかなり痛い失敗を繰り返しているんだけどねw でも、そこで諦めないというか、それでも前に進み続ける姿勢があってこそのお手柄だったはずだ(まぁ見せ場らしい見せ場はそれくらいだったが。あとは悠斗が第三者から莉子の彼氏に見られたシーンくらいかな、前巻もそうだったけどたぶん後々の恋愛要素の伏線だと思うけど)。
またこれまでは友好的とは言い難かった葉山もだいぶ態度が軟化していることも印象的。この現象が早いとみるか遅いとみるかは読者によって分かれそうだが、相応の事件数で莉子と悠人が警察の手助けしたことが積み重なってのことだと考えると、このタイミングで友好的になりつつあるのは感慨深い。
何より、この6巻、ちゃんとしたエピローグが付いていることが読了感を良くしている最大の要因だ。これまでは事件や犯人のその後はほとんど語られてこなかった。それが作者にとって何か作品制作上において理由があったことなのか、それとも単純に面倒で描いてこなかったのかは分からないが、今回はちゃんと描かれている。
物語中盤以降にはすっかり忘れていた町工場のその後、逮捕された華蓮のその後もちゃんと記されていて、おまけにその内容がこの作品の終わり方としてはかなりポジティブな部類に入るため、そこが読者からすると完全燃焼というか、良い意味で読んで得たネタを読者が自分の中で燃やし尽くすことが出来た部分かなと思う。
評価は★★★★★(5点/5点)。今までの中では文句なしで出来が良い。単巻完結ながら起承転結もしっかりしているし、「万能鑑定士」のタイトルと屋号を今まで以上に存分に発揮していたと思う。
余談だが、『金田一R』を観ていたせいか、雨森華蓮が怪盗紳士みたいにも見えたw あと華蓮の部下の二人、どう見てもお笑い芸人のあのコンビだよね(笑 角野卓三じゃねーよwww
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