万能鑑定士Qの事件簿 I
- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[Qシリーズ(松岡圭祐)]

≪あらすじ≫
東京23区を侵食していく不気味な“力士シール”。誰が、何のために貼ったのか?謎を追う若き週刊誌記者・小笠原は、猫のように鋭く魅惑的な瞳を持つ美女と出会う。凛田莉子、23歳—一瞬時に万物の真価・真贋・真相を見破る「万能鑑定士」だ。信じられないほどの天然キャラで劣等生だった莉子は、いつどこで広範な専門知識と観察眼を身につけたのか。稀代の頭脳派ヒロインが日本を変える!書き下ろしシリーズ第1弾。
(単行本裏表紙より抜粋)
感想は追記からどうぞ。
≪感想≫
実写化が決まり、もう目と鼻の先まで公開日が迫っている作品。映画版を観るかどうかはまだ定かではないものの、そこまで話題になっているのなら手に取ってみるのもいいだろうと思って、手にしてみた(実は前々からタイトルは気になっていた)。
今は「このミステリーが凄い!」大賞関連作品を読んでいるのだが、そこにこだわらなくてもいいわけだし、別に「有名作品は読まない。マイナーばっかだよ、ドヤっ?」なんてするつもりもないし(笑
さて、本編だがまさかの前後編。まぁ、ボリュームは今読んでいる「このミス!」シリーズからすると60~80ページくらい少ない通常の文庫サイズなのであまり問題じゃないんだけど。なので内容に関しては次の巻の感想で書こうかな、と思っている。
作風だが、まず読みやすい。文章として読みやすいというよりは、一つ一つの章というかパラグラフが短く構成されているのが特徴かな。簡単に言えばサブタイトルの一つ一つのボリュームが比較的短く、あっという間に次のサブタイトルが待っている。なので、読み手として「サクサク読んでいる」と錯覚しやすい。私は一時間弱の帰宅時の通勤時に読んだだけだが二日で読み終えた。テンポよく読みたい人には向いているかも。
ただ逆に言えば、読みやすいが「読んだ!」という読み応えはあまりなくなってしまっているほか、パラグラフごとの時間経過が結構長いこともあるので、いわゆる「(時間が)飛んでいる」シーンや時系列を意図的にゴチャゴチャさせているシーンもあるので、そういう部分での読みにくさがあるので、正直一長一短だと思う。まぁ、この辺りは個人個人での好みや趣向で評価は変わってくると思う。
キャラクターは、まず絶世かどうかは分からないが凄い美人で、聡明・博識の自称・万能鑑定士である凜田莉子のキャラクター性が強い。これは先にあげたように、一つ一つのパラグラフが短いため、キャラに個性の強さを持ってきて短いながらインパクトを残そうとした工夫ではないかと思っている(考えすぎかもしれないがw)。
過去編もあり、そこでのギャップや彼女がどういう経緯で今に至っているのか、をしている。ただ、ネタとして一巻にふさわしいかどうかはちょっと微妙なところ。一巻分くらいは、「美人で聡明で博識なミステリアスな女鑑定士」で通して読者自身の興味を引っ張ってから過去編を入れてきても遅くはなかったかな、と。
相手役の小笠原は、探偵モノにありがちな視聴者的・読者的なポジション。平凡といえばそれまでなのだが、空気の読めなさとかいろいろ余計なものが付随しているのがちょっと気になった。あと、イケメン。イケメンという設定は珍しい? まぁ、美男美女のコンビなら絵として問題はないのでOKだと思うけど。
内容としては、具体的な部分は二巻の時の感想で書くとして、漠然としたところでいえば、莉子の博識さとその博識さを応用した推理力・洞察力を活かした形となっている。どちらかといえば、ミステリー本というより教養本に近いかもしれない。あるいは雑学本。とりあえず1巻の中で誰かが死んだり怪我をしたりという展開はないが、日々の日常や小さな犯罪の中において莉子の博識さによって小さな歪や謎を一瞬で解明していく。
トリック云々よりも、莉子――しいては作者の博識を披露する本なのだ。
その是非や良し悪しというのはたぶん人それぞれだと思うが、雑学本だと思えばストンと腑に落ちたというか納得した。正直、どこで使うかもわからないし、披露する機会もたぶんないような専門的だけど使い道がない雑学・博学ではあるが、そういった「無駄」に見えることを楽しめるのが人間だと思えば、この本は正しくエンターテイメントと言えるのだと思う。
評価は★★★(3点/5点)くらい。まぁ、前後編に分かれてる前編部分なんてこんなものだと思うが。マイナス部分を上げるなら、先にあげたように短いパラグラフというか章が連なっている感じが、やや個人の趣向によって好悪が分かれるかなというところ。あとは主人公の小笠原の存在かw
余談だが、角川文庫の解説ってあとがきの間違いじゃないかと思ったw 最終ページの解説もちゃんと読んだのだが、六割七割がただ中身のあらすじになっていて大した解説になってない。仕事しろ、解説者www
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