国際親善試合 日本(A) 2 - 2 (H)オランダ
価 値 あ る 同 点 劇 と す る た め に
詳細は追記からどうぞ。
◆オランダ相手に同点
しかも、追いつかれて結果としての引き分けではなく、2点をリードされた状態で追いついての引き分けだ。さらにいえば、後半は日本がゲームをほぼ支配していたと言っても過言ではなかった内容であり、結果・内容ともに申し分ない。
この結果をどの程度評価するのかというのは個々人によって違うとは思うものの、私は高く評価するべきだと思う。相手は格上のオランダである。そのオランダから2点取ったこともさることながら、ビハインドから追いついたというハングリーさ、諦めない熱意というのは10月の欧州遠征では見られなかった部分だ。格上相手でも臆することなく最後まで諦めない戦いっぷりは、約半年後に迫ってきているW杯本番でも大きな武器になるはずだ。
無論、選手たちが口々にするようにこれで満足していてもダメなのだろう。先に「結果・内容ともに申し分ない」と書いたが、裏を返せば日本がそれだけの内容を残したとしてもFIFAランクひとケタの相手には引き分けにしかならないということだ。これは、「オランダ相手でもここまで戦える」という手ごたえであると同時に、「ここまでしてもオランダ相手には引き分けにしかならない」という世界の壁である。
多くのファンが口にしているかとは思うが、今日のオランダは勝てる相手だった。そこで勝ち切る力がないのが、今の日本代表というチームの「力」だということでもある。例えば一点目の内田選手や吉田選手、西川選手といったところの連携がもっとしっかりしていれば2-1で勝てたかもしれない。絶好のチャンスがあった岡崎選手・柿谷選手があそこで決めていれば3-2,4-2で勝てたかもしれない。
その「かもしれない(IF)」をIFで終わらせずに結果として出せた時、日本にはきっとW杯でベスト8、ベスト4さらにそれ以上という成果が着いてくるのではないか。
改めて書くが、今日の引き分けは評価されるべき引き分けだ。「オランダは本調子ではなかった」「絶対的エース・ファンペルシー選手がいなかった」「交代でリズムを乱した」と見ることは当然出来る。だが、W杯に全てのチームが100%のコンディションとベストチームで臨めるとは限らないことも忘れないでほしい。
逆にいえば、日本代表がベストの状態で迎えることが出来れば格上の相手だろうが苦戦するし、さらに上手く試合を運べば番狂わせを起こすことは決して不可能ではないということの証明だったはずだ。
W杯本番では、組み合わせ抽選の関係で格上の強豪チームと当たる可能性が高い。下手をすれば、いわゆる「死のグループ」と呼ばれるグループに入る可能性もある。そういう時に「自分たちがベストなら何とか出来る可能性が十分にある」という証明になった。
あとはこれと同じことを20日のベルギー戦で出来るかどうかだ。一度だけなら奇跡で終わる。二度出来ても偶然かもしれない。だからこそ三度同じことを繰り返せてこそ必然になる。年内最後の代表選なので「必然」には出来ないが、ベルギー戦でも同じことが出来ることを見せて欲しい。
◆先発入れ替え
さて、今日の試合での大きな違いは先発メンバーの入れ替えであった。監督にはいろいろな意図があったはずだ。相手がオランダということもあり守備力を重視して、ボランチに山口選手を、左サイドに清武選手を入れたのかもしれない。1トップには結果を残せなかった柿谷選手に代わって大迫選手、同じく全ての責任がGKにあるわけではないにせよここ数試合失点を重ねてきた川島選手に代えて西川選手を入れるなど、競争意識を高めるような配置も見られる。
一部報道では今回の招集に伴う合同練習では3-4-3の習熟に時間を割いていた、とも書かれていたのであるいは3-4-3を先発で使ってくるのではないかとも思ったが、さすがにそこまで無謀ではなかったか(私は3-4-3が使えるのか、ダメなのかの最終テストとしてやってみても面白かったと思うが)。
だが、これが功を奏した部分もある。
さらにザッケローニ監督は、後半スタートと同時にボランチ・左サイドに不動の先発だった遠藤・香川両選手を戻すなど、従来の采配に比べて先手を打つなどマネジメントの意識も高かった。
結果論にはなるが、遠藤・香川両選手が入って日本は2-1で折り返せた前半の勢いをさらに加速出来た。元より年齢からくる体力面・運動量での不安が兼ねてより指摘されていた遠藤選手は従来の半分の時間のプレーで良かったため動きが良かったように思うし、この交代が既定路線だったのだとすれば長谷部選手の前半での運動量の多さや動きの良さも「前半だけだから」という割り切りがあったのではないかとも思えた。
チームとしても「耐えて様子を探る前半」と「勝負を仕掛けて勝ちに行く後半」とでチームのスイッチの切り替えがしっかりしていたように思えた。
W杯の公式試合となれば1試合での交代枠は3つだ。選手たちの予期せぬ負傷・アクシデントに備えるため1枠はよほど勝負に出ないといけない時以外は温存しておくのがセオリーだとするなら、監督が自由に使える交代枠は2つ。その一つを遠藤選手で固定しておくのも悪くないのかもしれない。
ハッキリ言えば体力面での不安はあるし、そこから来る運動量や守備能力にも不安はあるのかもしれないが、このオランダ戦で改めて遠藤選手は自分がこのチームの「核」であり「心臓」であることを知らしめた。やはり遠藤選手の力は今のこのサッカーをする以上、どうしても必要な力だ。ならば、遠藤選手が70%の力で90分プレーするよりは、100%の力で45分プレーしてもらった方がチームとしても彼としても結果的に良いようにも思う。
◆ポゼッションサッカーへの割り切りが必要
日本チームはこれまでずっと「ポゼッションサッカー」を重視してきた節がある。それが100%間違っているとは思わない。しかし、やはりオランダクラスの相手なら相手に守る時間を与えれば与えるほどDFラインは強固となっていき崩すのが決して容易ではないのはもはや言うまでもない。
もちろんカウンターサッカーをすべきだ、とは思わない。相手によっては守備を固めてパス2~3本でカウンターで攻めた方が効率は間違いなく良いはずだが、今の日本サッカーがそれを目指していないのも素人目ながら良く分かる。
それを考えた時に、ポゼッションを重視する意識に対して割り切って捨てることも時には重要ではないかということだ。特にこのチームは、現在高い位置でボールにプレスをかけて奪うことを目的としている。実際に一点目は高い位置で長谷部選手が奪ってから、ポゼッションを重視するのではなく速攻を仕掛けたからこそ生まれたゴールだ。
二点目も一点目ほど極端ではないにせよ、時間をかけた遅攻ではなくワンタッチ・ダイレクトを繋ぎ合せた速攻だ。
今までの日本はこの「速攻」のスイッチが入りにくかった。それはパサーが出し手がなかったり、前線が動かないので無駄な横パスでさらに時間をかけた結果として自分たちのミスでボールを奪われたりということが多かったせいだ。
それを考えれば「ボールを奪ったらまず速攻を考える。相手に戻りが早くてダメそうだったらポゼッションに切り替える」くらいの柔軟さはやはり必要ではないか。
逆にいえばポゼッションに固執した感じがある後半終盤は攻め込みながらあと一点が取れなかった。固められて尚中央から攻めるという姿勢もあるようだが、それは10月遠征で必ずしも効果的ではないことくらい選手たちも理解しているはずだ。
それがダメだというのではなくバランス。中央からこじ開ける時もあれば、サイドをワイドに使って中央を広げさせながら攻める時も必要だし、ミドルレンジからシュートを打ってDFラインを引き出すことも必要だ。そういった攻撃のバランス感覚と柔軟性が磨かれれば、日本の攻撃力はまだまだ可能性を秘めている。
◆個人的ガゼッタ式採点
あくまで素人目で個人的なものです。どちらかというと、自分で書いておいてあとで有識者の方の採点とを見比べて自分の見る目をさらに養うためのものなので。
チーム:6.5 引き分けで終わってしまったが後半は試合を支配し、ビハインドから追いつく粘り強さとハングリーさを披露。ベルギー戦で同じことを維持出来るかが課題。
GK
西川周作:5.5 二失点目は相手のスーパーゴールだが、一失点目は川島選手なら止められたはず。セービングは安定していたが、飛び出しの判断はまだまだ甘い。
DF
今野泰幸:6.5 ここ数試合を考えればそつなくこなした。イエローを一枚もらったがあの場面はこれまでファウルで止められず失点していたケースなので及第点。出来ればカードをもらわずファウルで止めたいところだが、判断そのものは悪くなかったはず。
吉田麻也:6.0 一失点目ではポジションの悪さからフォローが出来ずじまい。とはいえ、目立ったミスも少なくなっており良くなってきている。
長友佑都:6.0 積極的なオーバーラップや守備でも運動量を発揮していたものの二失点目は詰め切れず長谷部選手との距離感を悪くしてロッペンを自由にさせ過ぎた。気になるのはやはり最近の怪我の多さか。
内田篤人:5.5 今の日本代表の中では最もパフォーマンスが安定していたが、この試合はブレ幅が大きかった。一失点目はDFならしてはいけないミス。しかし、その後は相手のクロスや決定機を凌いだり、二点目に大きく絡むオーバーラップと連携プレーを見せるなど良さも十分見えた。
酒井高徳:5.5 途中交代。豊富な運動量によって前後へのオーバーラップの多さは魅力。しかし、あそこまで攻め込むのであればもう少しクロスの精度を求めたい。
酒井宏樹:5.0 途中交代。無難と言えば無難だが、自らの武器であるドリブル突破やクロスは見られず。アピールの場にはならなかった。
MF
長谷部誠:6.0 前半のみとなったが、その分だけ精力的に動いていた。二失点されても諦めずに前線に顔を出し、1アシストをしたハングリーさやキャプテンシーは少しずつ本来の力を取り戻しつつある証か。二失点目は長友選手との距離感が悪かったもののもう少し寄せておきたかった。
山口 螢:6.5 序盤のワンプレーでのミスをした時はどうなることかと思ったが、その後は安定しポジションの良さと守備の高さを見せた。「前半を耐えて後半仕掛ける」というゲームプランなら先発でそん色なく使えるメドが立ったのも大きい。
本田圭佑:6.5 前半は完全に影が薄かったものの、後半に蘇った。高い連携から1点を取れたことは非常に大きい。決めて欲しい時に決める力があることを改めて証明して見せた。
遠藤保仁:6.5 途中出場。プレー時間が半分だったこともあってキックの精度は従来の輝きを取り戻し、運動量もボランチを組んだコンビが山口選手だったおかげもあり、まずまずというところ。何歳だろうと選手なら「先発でやりたい」と思うだろうが、後半45分とプレー時間を限定するのは彼の卓越した能力を活かすためには現実的な選択肢だろう。
FW
大迫勇也:7.0 前半は序盤からプレスに走りファーストディフェンスを怠らなかった。場合によってはボランチのラインまで追ってフォローするなど守備の意識も高く、何より数少ないチャンスで1得点決めた決定力は柿谷選手との差には十分。
岡崎慎司:5.5 運動量は豊富だったがいつも以上に決定力に欠いた。前半序盤のボレーはFWなら決めて欲しいし、最低でも枠内には打って欲しかったところ。
清武弘嗣:5.0 前半のみの出場でややアピールとしてはインパクトに欠けた。とはいえ、中央に切れ込んでのボール捌きには定評があるだけに、そういったところがもっと見られれば良くなりそうな予感はある。
香川真司:6.0 途中出場。中央でプレーすることを意識的に増やしている節もあって、先発していた試合よりも試合への入り方が良かったように思う。ペナルティエリア内でのプレー、トップ下の位置からのスルーパスなどようやく本来の力を代表でも取り戻しつつある。
柿谷曜一朗:5.0 途中出場。大迫選手と違い決定機を外すなど、パフォーマンスは低調に終わった。先発を外されたことや、ここ数試合先発で使われながら点を取れなかったことなど奮起していたとは思うが、結果は伴わなかった。
監督
アルベルト・ザッケローニ:7.0 大胆な先発選手の入れ替え、守備戦術の徹底と定評のあった高い修正力を示すと同時に、後半開始時に選手を替えその後も断続的に交代を積極的に使う(中二日でのベルギー戦も見越していてのことだろう)など試合マネジメントも適格だった。これが出来るならブラジルW杯が終わるまでは彼を監督に据えておくべきだろう。
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