第三回WBC決勝ラウンド プエルトリコ3-1日本
日本は弱かった。それだけ
選手たちはここまでよく頑張った。
じゃあ頑張れなかったのは?
以下、追記です。
◆プエルトリコは強く、日本は弱かった
ただ、それだけだと思う。たった一度の決戦。たった一度の戦いで「自分たちの力を出し切る」というのも立派な“強さ”だ。その強さがプエルトリコにはあって、日本にはなかった。
より具体的にいえば、それは「土俵際の強さ」だと思う。
あと一本、あと一歩。そういったギリギリのラインでの強さを、なんか日本は台湾戦で使いきってしまった感じがあった。
もっと早くあと一本ヒットが打てていて、大量点とは言わないが一点でも取れていれば、きっと試合の展開や流れはもっと違うものだったに違いない。
また、それぞれの場面で守備やサインでつまらないミスも少なくなかった。そこでのあと一歩、あと少しがあったならもっと良い流れが流れていたはずだ。
その、あと一歩の瀬戸際・土俵際で踏み止まったのはプエルトリコで、踏み止まれなかったのは日本。あと一本、あと一歩を許してしまった。今まで踏み止まってきた――というより、そのギリギリのラインで踏み止まってこその細かな技術で試合をするのが日本野球だったはず。日本人の体躯では、なかなかパワーや身体能力を前面に出して試合をするのが難しいからこその日本野球だったが、それを相手にやられてしまった。
◆それでも悔やまれる敗戦
日本にとって悔やまれるのは、ちょっとの采配ミスやサインミスで点を与えたり、流れを断ち切ったりしてしまったところだろう。相手ピッチャーが良かったこともあるが、それを差し引いても日本の打線は打ち急ぐ感じが強く、もっと選球眼良く粘っこく攻めて欲しかった。投手陣だって三点を奪われたが、三点だけだ。先制点を与えてしまったことはミスではあるが……。
一人ひとりが全ての力を出し切っての敗戦というよりは、一人ひとりの小さなミスが積もり積もってその結果としての敗戦に感じるので、それは悔やまれるところだろう。先に挙げたように打者なら打ち急ぎ・センター返しを中心とした基本を忘れたようなバッティングも多く、これまでチームの一員としての打撃も見せてくれた中田選手が最後の最後で大振りの三振でアウトになったシーンは、なんかその象徴だった気がした。まぁ、最後のアウトとなった松井選手の初球打ちは微妙なところだったけど。
個人的には勝負を決定づけてしまったのは、八回のサインミスではなく五回の攻撃だと思う。一死一二塁、打者は稲葉・松田両選手。この二人が、九回の中田選手の先駆けのように「自分で決めてやろう」と欲を出して二人とも三振で終わったことで、流れは完全にプエルトリコへと傾いた気がしている。
二次ラウンドの終盤から渡米後の練習試合でそこそこ打ててしまったために「繋ぐ」意識が確実に薄れていたのは否めない。ここでちょっとそういうの(敗戦)を感じてしまっていた。
あとはやっぱり四番が二度のスコアリングポジションにランナーを置いたチャンスで凡退しているチームじゃ勝てない。復調していたはずなので、アメリカに来て何か噛み合っていたものが狂ってしまったのか、それとも復調していたはずと思っていたこっちがそう勘違いしていただけなのか。どちらにせよ、「四番・捕手・主将」の三重責を担わせたのは失敗だったと思う。
◆やはり問題は首脳陣とフロントか
それを含めて、やっぱりファンとしては最後まで首脳陣が機能してたのかなーという疑念がある。先に挙げたように一人の選手に重責を三つも担わせたせいで本来の力が発揮出来なかった、と評されたって首脳陣はおかしくない。一点が重みを増すことを台湾戦などを経過して知りながら、なかなか重い腰が上がらず、継投策も含めて采配は常に後手に後手に回った。
挙句、八回の最後の好機に攻め急ぎ、サインミスを生み出した。結果的に先発出場した試合では一度も四番を外さなかった打者がチャンスで打席に立っている時に、ましてや負けている状況でダブルスチールやヒットエンドランをするとは思えない。それらのサインが出ていれば、(ケースバイケースだが)阿部選手はバットを振っているはずでもあるので、サインミスなのだろう。
あとはどこまで首脳陣が打撃や守備で選手たちをコントロールできていたか。
ランナーいる状況ではどういうバッティングをさせるのか、いない状況ではどうするのか。そういうのが一つ一つ細かく示されていたというよりは、とりあえずオーダーだけ組んで「後は頼んだ」で終わっているような気がする。シーズン中ならそういうことも中にはあるのかもしれないが、一戦必勝が求められる国際試合の短期決戦でそれでいいのだろうか?
機能しない首脳陣。その首脳陣を選んだNPBの責任は重い。監督の選考に苦難があることは想定していたにもかかわらず、選手会の問題もあってなかなか前には進まずのこの首脳陣となったわけだ。
日本代表を今後常設化するという動きもあるようだが、その前に、サッカーのように専任の代表監督の選抜と育成は必須になる。
◆専任スタッフの選抜と育成を
そう、育成が必要だと思っている。
プロ野球出身の監督はリーグ戦を戦い抜くことに関しては選手だった頃の知識や経験が活きるかもしれない。しかし、短期決戦でそれが活きるかというと難しいところだということが改めて判明しただろう。
短期決戦には短期決戦に精通した監督やスタッフが必要だということだ。
そしてかつてのプロ野球出身の監督では短期決戦に対する知識や経験が不足がちということ。それでも強いてあげるなら、日本シリーズを始めポストシーズンでの采配経験豊かであることが望ましかったわけだ。たぶんそれはNPBも解かっていて、それゆえに当初は現役監督による兼任を目指していた(采配における試合勘があり、なおかつポストシーズン経験豊富な強豪チームの監督に打診があったわけで)。ただ今回の首脳陣がどういう面々だったかをちょっと振り返ればこれらの経験や知識があるかどうかは……。
プロ野球出身の監督を使うならそれ用の育成も今後必要になるだろう。それが出来なければ、第一回・第二回と優勝し、今回はベスト4だったWBCで、次がもしあるのなら日本は決勝ラウンドにすら進めずに終わる。それくらい周りの国の野球レベルは確実に上がってきているのだ。しかも、それらのチームの多くが日本式あるいは日本流なところを取り入れている。
野球レベルの向上著しいことは、優勝候補とされた日本がベスト4敗退、強豪国とされてきた米国・韓国・キューバがそれぞれ決勝ラウンドにすら進めず、韓国に至っては一次ラウンドで敗退したことからも間違いない。十回、二十回と戦えば今でも日本・米国・韓国・キューバの四カ国が実力としては頭一つ抜けているかもしれないが、短期決戦ではそうはならないわけだ。
ゆえに、日本が勝つには今後、短期決戦に特化した監督以下スタッフの配置と育成が必要となる。
選手に関してはどうしようもない。四年に一度の、しかも次があるのかどうかすら定かではないような大会のために専任選手をつけるわけにもいくまい。だからこそ、スタッフたちは特化された人間じゃないとだめだと言うことだ。
選手たちは良く頑張ってくれたと思う。感動する試合もあったし、調整が難しいこの時期に無理をしてここまでのコンディションとクオリティに何とか持っていって試合をしてくれた。まずはお疲れ様、と言いたい。
そして監督以下スタッフは、一ヶ月くらい監禁して反省点を徹底的に精査すべきだ。ここで「負けちゃったね、残念残念」で終わらせてはいけない。彼らには敗戦の責任として徹底的に検証と反省を行ってもらい、次の大会で王座を奪取するための準備を、今日から始めてもらおうではないか。
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