第三回WBC一次ラウンド 日本5-3ブラジル
薄氷を踏む想い……
以下、追記です。
◆勝つには勝ったけど
皆さんなら今日の試合は、何点を付けますか。
私は……どうですかね。70点くらいでしょうか。結構、甘めの採点だとは思いますが、国際大会の初戦っていうのはどんなトッププロでも緊張で固くなるものだと思うので、「勝った」という結果に対して甘めの採点ということでご理解いただければ、と。
とにかく今日は勝つことが重要だった。
今日負けると、ブラジルは残りキューバと中国と戦って一勝すれば、二勝で二次ラウンドほぼ確定。逆に日本は中国・キューバに連勝しないと正直先がかなり厳しい状況だった。それゆえに、「初戦で勝つ」というのは数字上は「一勝」なんだけど、それ以上の重みがある。
代走は使わなかったけれど、代打は積極的に使い、その采配も比較的、的確なモノだった。ベンチワークも先の壮行試合・強化試合と比べれば機能していたとも言えるので、その辺をいろいろと加味して70点。
裏を返せば、これだけのプラス要素を打ち消して30点をマイナスにするだけの「粗」も見えたと言うことだけど。
◆復調の打線。でも
最終的に五得点、安打と四死球を併せれば十以上の出塁を残しているので、私は合格点を上げて良いと思っている今日の打線。もともとホームランを始め長打をバンバン打つ(打てる)ようなチームではないので、そういう意味では安打と四死球でとにかく繋いで、タイムリーや犠打・犠飛でしっかりと点を積み重ねて行くのがこのチームの、そして日本の「野球」のスタイルだと思う。
強いて注文を付けるなら、打線の始動がもう少し早いと楽な試合になった。打線が本格的に繋がったのが八回というのは、監督、解説者共に口にしていたように「苦しい」試合としてしまったわけだ。連戦となる戦いなだけに精神的な疲労も蓄積したくないところなので、特に初戦はもう少し、(ブラジルには申し訳ないが)楽な試合・連覇の王者らしい戦いが観たかった。
まぁ、でもそれは「強いて挙げれば」の話。裏を返せば、それだけ日本打線を散発に終わらせていたブラジル投手陣の出来が良かったと言うことで、素直に相手を褒めて良いところだろう。
むしろ、日本にとって不安要素は一昨日も書いたように「代打」だ。山本監督は、勝利直後のインタビューで明言している。
「あの場面は(阿部)慎之助しかいなかった」
良く言えばそれだけ阿部慎之助という選手の打撃の能力の高さを示しており、悪く言えば彼以外の代打要員がいないことを示している。
阿部選手の代打起用は、言ってみれば彼の怪我に端を発した臨時采配だ。IFの話なんてしても意味なんて無いのかもしれないが、私が言いたいのは「じゃあもし阿部選手が先発起用されて、それでも今日のような試合だったら、あの場面に誰を代打に出すの、監督?」ってこと。
代打っていうのは、これ以上ない攻撃の切り札だ。打順を気にせず使えるわけだからね。塁にランナーが溜まった時にコールすれば使える。幾ら国際試合で大量点が見込めないにしたって、こちらが零点では勝てないのだから、必ずどこかで打てる選手を使わないといけない。
そう考えた時、このチームにそういう選手って阿部・中田の両選手しかいないことに不安を覚える。
打率が高い選手は多い。最多安打タイトルを取った選手もいる。けど、代打要員として本当に欲しいのはただの打率じゃなくて得点圏打率の高さだったり、打点の多さだったりそういうところなんだと思うんだよね。
そして、そこが欠如している。
だから私は、とりあえず一次ラウンドは阿部・中田の両選手は代打で良いと思っている。二次ラウンドも欲を言えば、彼ら二人を代打に押しのけるくらい他の選手の調子が良いことが理想。怪我をしている部分があるのに、無理して出す場面ではない。どうせ無理をするなら、もっと負けられないギリギリのところで強行出場して欲しい。
特にトーナメント方式に切り替わる準決勝以降はそういう試合が連戦となるわけだから、調子と相手次第で彼らも先発で使えるようなオプションがあると良いのかな、と。
果たして、このチーム構成が吉と出るか、凶と出るか……。
◆スモールベースボールにしてやられた投手陣
九回三失点。田中・杉内・摂津の三投手でそれぞれ一失点ずつという内容だった。まぁ、守って競り勝たないといけない野球をしている以上、九回三失点で合格点を与えるのは難しい話。けれど、各々の投手は大崩れしたわけではなく、それぞれ最少失点で抑えているのも事実。
だから、あとは取られるタイミングだと思うんだよね。
例えば、今日のスコアは5-3だった。これがもし、日本が先制をして、ずっとリードをする中での「5-3」だったら合格点でも良いのかなと思う。
でも、そうじゃなかった。
半分近くかそれ以上の時間を、相手にリードを許す中での「5-3」だから、合格点は与えられないし、人によっては及第点すら与えないかもしれない。
まぁ、今さらこんなこと書くまでもないのだけど、先発(第一・第二含む)に大切なのは「試合を作ること」なんだよね。極論を言えば、先制点さえ取られなければとりあえずOK、みたいな。今日みたいに二回一失点でも、三回一失点でも味方が零点だと試合を作って先発の役目を完璧に果たした、とは言いづらい。逆に、二回五失点でも味方が六点以上取っていたなら、「とりあえず同点・逆転は許さなかった」となるわけだ。
こういうのが難しいところだよね。絶対評価が出来る「点数」「安打数」などいろいろな数字上の項目があるのに、いざ、試合を観ると求められる部分には相手との相対評価による部分も大きいのだ。
あとは点の取られ方も悪かった。
ブラジルの三得点は日本がやりたかった野球だ。先頭バッターが出塁し、次のバッターの進塁打によって塁を進めて、クリーンアップで返すという理想的な点の取り方を行い、その後も単に身体能力を前面に押し出してくるのではなく、例えば盗塁だって投手の投球モーションを盗むのが難しいと判断したのかディレイドスチールを選択したり、セーフティバントも日本の守備陣形を見透かした上での見事な作戦だった。
一見すればこれからは「奇策」に見えるかもしれない。
けれど、「奇策」は相手をしっかりと観察し、相手がソレに対して警戒していないと判断して使わないと「奇策」足り得ない。ゆえに、「奇策」の成功は相手の観察眼の良さであると同時に、こちら側の隙(ミス・無警戒さ)だとも言える。
こうした詰めの甘さと油断が、結果的にこの苦しい試合展開を招いたとも言える。
◆とはいえ、勝った試合は置いておいて
次の試合があるのだから、次の試合を考えよう。それが建設的、というものだw
中国はブラジルよりも世界ランキングが上だが、そもそも「箱を開けてみないと分からない(試合を実際にしてみないと分からない)」と言われるように、スポーツでの世界ランキングはある程度の差がない限りは気にする必要はないだろう。
個人的には、技術的にはブラジルよりも戦いやすい相手だと思う。日系人・日本チーム(プロ・アマ問わず)での野球経験者が多かったブラジルチームに比べれば、まぁ言葉が適切かどうかは分からないが中国の方が粗っぽいプレイをしてくる印象がある。
また、日本のプロチームとの壮行・強化試合では大敗しており、調子も今一つのようだ。
とにかく、まずはここで連勝して二次ラウンド進出を決めて、世界ランク一位のキューバと心おきなく戦えるようにしておきたい。
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