第三回WBC壮行試合 オーストラリア2-3日本
良くも悪くも
何とか勝った感じ
ですね。さてはて、その中身はどうだったんでしょうか?
以下、追記です。
◆勝つには勝ったが
本音を言えば、結果的な勝ちでしかない。でも、彼らはプロの野球選手であり、プロの監督以下スタッフたちだ。ただでさえ二連覇中のチームに求められるモノは「勝利」という二文字の結果だけであることを考えれば、それがどんな形であれ勝ったことは大いに評価したい。
もちろん良い内容の試合をして結果として勝つことがベストなのだが、それが出来ない相手ならば良い勝負をしても結果として試合に負けるくらいなら、勝負で負けても試合で勝つべきだと思う。今日の勝利はまさしくそれ。それも意図的に泥臭く勝ったというよりは、かなり運の要素が強かった。
しかし、試合後の監督インタビューでも言われていたように「一つの勝ち」はチームに良い効果を与えてくれると信じている。バッターが一本のヒットで、ピッチャーが一つのアウトや三振で変わると言われる世界だ。一つの勝ちによって、彼らに精神的な余裕が生まれて力みや緊張が少しでも緩和されてくれることを望む。
◆結果の出ない主軸と結果を残した脇役
この試合は、とにかくこれに尽きる。でも投手陣では、当番が予定されていた杉内・能美両投手の調整が順調で、終盤での登板が予定される牧田投手も結果として三者三振で試合を締めくくっており、投手はそうでもないのかもしれないけれどねw
個人的には、杉内投手の現状が確認できたのは大きいのではないかと思っている。何せ、肩痛で昨シーズンはポストシーズンで一度も登板しなかったわけで、肩関係での調整不足は前田投手や最終メンバーから外れた浅尾投手などもいたわけで、「実際マウンド立って投げられるの?」という不安はこれで少なからず大部分が払拭出来たはずだ。
しかし、田中投手は中核を期待される投手としては不安を残す。ローテーションで行くなら、3/2の開幕ブラジル戦は先発が予想されるものの、国際試合は今日みたいなことがあるので相手に少しでもアドバンテージを与えるような状況は避けたい。杉内、能美の両投手が良かったことにどう首脳陣が反応するか。
だが、それ以上に深刻なのは打線の貧打だ。四死球を選んだ選手も多いのでそれをヒット一本分と換算するとそうでもないのだが、五回まで出塁はあってもヒットなしはこのレベルの選手が集まっていることを考えると厳しい。特に上位打線になかなか当たりが出ないことは深刻。四死球でも良いが、四死球で一点取るのはかなり難しいのでね……。
上位打線に当たりが出ないということは、それだけ(誤解を恐れずに書くなら)無駄にする打席が増えるということだ。当然、九番バッターよりは四番バッター、四番バッターよりは一番バッターの方が打席に立つ回数は多いわけだから、そこでのヒットってのは大切。試合中、実況や解説の古田・工藤解説者が言ったように“勢い”がつく。ヒット一本も四死球一個も結果は同じなんだけどね。
そうした一方で結果を残したのは脇役として主軸を支えるベンチ要員だ。決勝点の逆転3ランは第二捕手の相川選手、そのお膳立てをしたのはベテランで不慣れな一塁を守備固めで守った井端選手だ。
スペシャルサポーターとやらのSMAP中居さんも、伊達に野球好きなだけあって大胆に放送最後には「先発捕手を相川選手にして、DHは阿部選手にするのもあり(意訳)」と発言するなど、結果を残した選手の先発起用を含めて打線入れ替えも考えるべきだろう。「そんな刹那的に考えなくても」と思われる方もいると思うが、WBCが短期決戦である以上、調子が良く結果を残している選手を使うべきだ。この水準の選手たちならそこまで能力に極端に溝があるわけでもない。
それこそ先に挙げたように彼らは「結果」の世界で生きるプロなのだから、それならなおのこと結果が大切だと思う。
◆実は選手以上に深刻な不振
それが首脳陣だと思っている。オーストラリアの監督やコーチが相応に結果を見せていただけに、相対的に余計に日本の山本監督以下コーチたちは何をしていたのかと思ってしまう。
今日のオーストラリアは、試合内容では日本を上回っていた。先発投手の不安定な早い回で得点を奪うと、(球数制限もあるが)矢継ぎ早に癖の強い投手を次々に投入することで日本打線の的を絞らせなかった。守備も日本対策なのか、それとも総合的な確率論なのか、特に外野の守備位置はバッターの利き打に応じて常に微妙に変更することで、日本の安打性(しかもツーベース以上)を何度も防いでいて、八回こそ誤算だっただろうが、そこまでは完璧にオーストラリアの術中にはまっていた。
それに対して日本はどうだったか? なかなか打てないオーストラリアの投手に対して何か作戦や指示は出せていたのか? そもそもオーストラリア投手陣に関する情報やその分析は十分だったのか? オーストラリアは一次ラウンドこそ「組」は違うが、勝ち上がれば二次ラウンドでは当たる可能性がある相手だ。情報不足・分析不足なんて言い訳は通用しない。
おまけにどんな野球をしたいのかが見えなかった。いわゆる「スモールベースボール」をするのかとも思ったが、足での撹乱らしい撹乱はまともにされず、小技らしい小技も見れず、ヒットエンドランもなければバント(セーフティ含む)も真っ当なものはない。日本人らしい組織力もあったのかと考えても、例えば狙い球取ってもチームとして統一されていたようには見えず、悪い意味で選手任せ過ぎる。
結果的に勝ったのはホームラン一発って、スモールベースボールとは対極の位置にあるものだ。結果的には動かなかったことがホームランに繋がったが、あの場面でも動かないのだからベンチで監督たちはなにをしていたのだろうかと思うばかり。解説で工藤さんがひたすら「動け」「動け」と発言していたのも、観ていた当初はどうかと思っていたものの、いざ試合が終わって冷静に振り返ってみれば確かにもっと動くべきだったので、あの解説や発言は正論だったのだと感じる。
二点差が微妙な点差だったので、バントもエンドランも使いにくかったのかもしれないが、それにしたってもう少しベンチで動く姿勢は見せて欲しかった。監督は選手集めて試合中ベンチで眺めてるだけではない。壮行試合で「やりたい野球」の方向性すら出来なかったら、本番ではどうなってしまうのか。
先の二連覇では現役監督だったこともあって、比較的「やりたい野球」が見えていたし実行していたような記憶もあるので、三連覇への最大の不安材料は実は監督なのかもしれない。
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